シド・バレット
シド・バレット（Syd Barrett、1946年1月6日 - 2006年7月7日）は、イギリスのミュージシャンであり、プログレッシブ・ロックバンド、ピンク・フロイドの創設メンバーとして知られています。本名はロジャー・キース・バレット（Roger Keith Barrett）。彼はバンドの初期において、ボーカルとギターを担当し、その独特な音楽性とカリスマ性でグループを牽引しました。
ケンブリッジの中流家庭に生まれたバレットは、音楽と芸術に理解のある両親のもとで育ちました。幼少期から音楽に親しみ、ニックネームの「シド」は、13歳の頃にジャズバンドで活動していたミュージシャンの名前に由来すると言われています。また、後にピンク・フロイドで共に活動するロジャー・ウォーターズとは幼馴染でした。
当初は画家を目指し、1964年にロンドン芸術大学のキャンバーウェル・カレッジ・オブ・アーツに進学しましたが、音楽への情熱も捨てきれず、ウォーターズらとピンク・フロイドの前身となるバンドを結成。作詞、作曲、ギター、ボーカルを担当し、バンドの中心人物として活躍しました。1965年頃からロンドンのアンダーグラウンドシーンで注目を集め、多くのアーティストと交流を深めましたが、その頃から薬物への依存が見られるようになりました。
1967年にピンク・フロイドがメジャーデビューすると、バレットの端正な容姿と斬新な音楽性はバンドを成功に導きました。しかし、成功に伴うストレスやLSDなどの薬物使用により精神のバランスを崩し、レコーディングやライブ中に奇行を繰り返すようになり、1968年にバンドを脱退することになりました。
1970年には、ピンク・フロイドのメンバーやソフト・マシーンの協力を得て、ソロアルバム『帽子が笑う…不気味に』を発表。このアルバムは全英トップ40にランクインし、続く2作目のソロアルバム『その名はバレット』も発表され、初期サイケデリック・フォークの代表的なアーティストと見なされるようになりました。しかし、これらの作品は精神的に不安定な状態で録音されたもので、ポップで魅惑的なサウンドの中に、危機的な雰囲気が漂っていました。
その後も新作の制作が計画されましたが、バレットの精神状態は悪化の一途を辿り、1972年に新たに結成したバンド、スターズでの数回のライブを最後に、公の場から姿を消しました。その後は故郷のケンブリッジに引きこもり、精神病に苦しみながら、過去の作品からの印税と生活援助で生活を送りました。晩年にはパパラッチにその姿を捉えられましたが、音楽活動に復帰することはありませんでした。1996年にはピンク・フロイドの一員としてロックの殿堂入りを果たしましたが、式典には出席しませんでした。
晩年は鬱病が悪化し、ピンク・フロイドのメンバーとの面会も許されず、糖尿病の合併症で失明寸前の状態だったといわれています。2006年、膵臓がんのため60歳で死去しました。
妹は、バレットの精神病は過度に強調されていると指摘し、美術史の研究書の執筆に傾倒していたこと、地元住民と良好な関係を築いていたことを明らかにしました。また、看護師の立場から、バレットには幼少時からアスペルガー症候群の兆候が見られたこと、共感覚の持ち主であったことも語っています。
バレットの音楽活動期間はわずか5年足らずでしたが、その卓越した音楽センスとカリスマ性は、多くのミュージシャンに多大な影響を与えました。デヴィッド・ボウイは、バレット時代のピンク・フロイドの楽曲をカバーし、自身のコレクションにバレットの絵画を多数所有しており、バレットの影響を公言しています。また、グラム・ロックの代表格であるマーク・ボランもバレットのファンであり、その影響でカーリーヘアにしたと言われています。他にも、ブラーのメンバー、ロビン・ヒッチコック、ジョン・ライドン、ミック・ジャガー、ジミ・ヘンドリックスなど、多くのアーティストがバレットからの影響を公言しています。
バレットの死後も、その影響力は衰えることなく、数々のベストアルバムやリマスター盤が発売され続けています。
「シド」という通称は、学生時代に通っていたパブのベーシスト、「シド・バレット」に由来します。彼との区別のために、綴りを「Sid」から「Syd」に変更したと言われています。
1975年にピンク・フロイドがアルバム『炎〜あなたがここにいてほしい』のレコーディング中に、バレットがスタジオに現れたというエピソードがあります。しかし、風貌が大きく変わっていたため、当初は誰も彼だと気づかなかったそうです。
1960年代には、バレットの母親が実家を下宿として貸しており、そこに当時イギリス留学に来ていた小泉純一郎が住んでいたというエピソードもあります。
スタジオ・アルバム
『帽子が笑う…不気味に』 - The Madcap Laughs (1970年)
『その名はバレット』 - Barrett (1970年)
ライブ・アルバム
『ピール・セッションズ』 - The Peel Session (1987年)
The Radio One Sessions (1992年)
コンピレーション・アルバム
『何人をも近づけぬ男』 - The Madcap Laughs & Barrett (1974年) ※1st&2ndアルバムのカップリング盤
『オペル〜ザ・ベスト・コレクション・オブ・シド・バレット』 - Opel (1988年)
『クレイジー・ダイアモンド』 - Crazy Diamond (1994年)
『ぼくがいなくて寂しくないの?』 - The Best of Syd Barrett: Wouldn't You Miss Me? (2001年)
『幻夢 オールタイム・ベスト・アルバム』 - An Introduction to Syd Barrett (2010年)
ピンク・フロイド
『夜明けの口笛吹き』 - The Piper at the Gates of Dawn (1967年)
『神秘』 - A Saucerful of Secrets (1968年)
1965: Their First Recordings (2015年)
『The Early Years 1965-1972』 - The Early Years 1965–1972 (2016年)
映像作品
『愛と幻想の一夜』 - Tonite Lets All Make Love in London (1968年)
『ロンドン 66-67』 - London '66–'67 (1995年)
『ピンク・フロイド・アンド・シド・バレット ストーリー』 - The Pink Floyd and Syd Barrett Story (2003年)
* 『シド・バレット 独りぼっちの狂気』 - Have You Got It Yet? The Story of Syd Barrett and Pink Floyd (2023年公開) - アート集団「ヒプノシス」のメンバー ストーム・トーガソン監修の映像素材から創られたドキュメンタリー映画
生涯
ケンブリッジの中流家庭に生まれたバレットは、音楽と芸術に理解のある両親のもとで育ちました。幼少期から音楽に親しみ、ニックネームの「シド」は、13歳の頃にジャズバンドで活動していたミュージシャンの名前に由来すると言われています。また、後にピンク・フロイドで共に活動するロジャー・ウォーターズとは幼馴染でした。
当初は画家を目指し、1964年にロンドン芸術大学のキャンバーウェル・カレッジ・オブ・アーツに進学しましたが、音楽への情熱も捨てきれず、ウォーターズらとピンク・フロイドの前身となるバンドを結成。作詞、作曲、ギター、ボーカルを担当し、バンドの中心人物として活躍しました。1965年頃からロンドンのアンダーグラウンドシーンで注目を集め、多くのアーティストと交流を深めましたが、その頃から薬物への依存が見られるようになりました。
1967年にピンク・フロイドがメジャーデビューすると、バレットの端正な容姿と斬新な音楽性はバンドを成功に導きました。しかし、成功に伴うストレスやLSDなどの薬物使用により精神のバランスを崩し、レコーディングやライブ中に奇行を繰り返すようになり、1968年にバンドを脱退することになりました。
1970年には、ピンク・フロイドのメンバーやソフト・マシーンの協力を得て、ソロアルバム『帽子が笑う…不気味に』を発表。このアルバムは全英トップ40にランクインし、続く2作目のソロアルバム『その名はバレット』も発表され、初期サイケデリック・フォークの代表的なアーティストと見なされるようになりました。しかし、これらの作品は精神的に不安定な状態で録音されたもので、ポップで魅惑的なサウンドの中に、危機的な雰囲気が漂っていました。
その後も新作の制作が計画されましたが、バレットの精神状態は悪化の一途を辿り、1972年に新たに結成したバンド、スターズでの数回のライブを最後に、公の場から姿を消しました。その後は故郷のケンブリッジに引きこもり、精神病に苦しみながら、過去の作品からの印税と生活援助で生活を送りました。晩年にはパパラッチにその姿を捉えられましたが、音楽活動に復帰することはありませんでした。1996年にはピンク・フロイドの一員としてロックの殿堂入りを果たしましたが、式典には出席しませんでした。
晩年は鬱病が悪化し、ピンク・フロイドのメンバーとの面会も許されず、糖尿病の合併症で失明寸前の状態だったといわれています。2006年、膵臓がんのため60歳で死去しました。
妹は、バレットの精神病は過度に強調されていると指摘し、美術史の研究書の執筆に傾倒していたこと、地元住民と良好な関係を築いていたことを明らかにしました。また、看護師の立場から、バレットには幼少時からアスペルガー症候群の兆候が見られたこと、共感覚の持ち主であったことも語っています。
音楽シーンへの影響
バレットの音楽活動期間はわずか5年足らずでしたが、その卓越した音楽センスとカリスマ性は、多くのミュージシャンに多大な影響を与えました。デヴィッド・ボウイは、バレット時代のピンク・フロイドの楽曲をカバーし、自身のコレクションにバレットの絵画を多数所有しており、バレットの影響を公言しています。また、グラム・ロックの代表格であるマーク・ボランもバレットのファンであり、その影響でカーリーヘアにしたと言われています。他にも、ブラーのメンバー、ロビン・ヒッチコック、ジョン・ライドン、ミック・ジャガー、ジミ・ヘンドリックスなど、多くのアーティストがバレットからの影響を公言しています。
バレットの死後も、その影響力は衰えることなく、数々のベストアルバムやリマスター盤が発売され続けています。
エピソード
「シド」という通称は、学生時代に通っていたパブのベーシスト、「シド・バレット」に由来します。彼との区別のために、綴りを「Sid」から「Syd」に変更したと言われています。
1975年にピンク・フロイドがアルバム『炎〜あなたがここにいてほしい』のレコーディング中に、バレットがスタジオに現れたというエピソードがあります。しかし、風貌が大きく変わっていたため、当初は誰も彼だと気づかなかったそうです。
1960年代には、バレットの母親が実家を下宿として貸しており、そこに当時イギリス留学に来ていた小泉純一郎が住んでいたというエピソードもあります。
ディスコグラフィー
スタジオ・アルバム
『帽子が笑う…不気味に』 - The Madcap Laughs (1970年)
『その名はバレット』 - Barrett (1970年)
ライブ・アルバム
『ピール・セッションズ』 - The Peel Session (1987年)
The Radio One Sessions (1992年)
コンピレーション・アルバム
『何人をも近づけぬ男』 - The Madcap Laughs & Barrett (1974年) ※1st&2ndアルバムのカップリング盤
『オペル〜ザ・ベスト・コレクション・オブ・シド・バレット』 - Opel (1988年)
『クレイジー・ダイアモンド』 - Crazy Diamond (1994年)
『ぼくがいなくて寂しくないの?』 - The Best of Syd Barrett: Wouldn't You Miss Me? (2001年)
『幻夢 オールタイム・ベスト・アルバム』 - An Introduction to Syd Barrett (2010年)
ピンク・フロイド
『夜明けの口笛吹き』 - The Piper at the Gates of Dawn (1967年)
『神秘』 - A Saucerful of Secrets (1968年)
1965: Their First Recordings (2015年)
『The Early Years 1965-1972』 - The Early Years 1965–1972 (2016年)
映像作品
『愛と幻想の一夜』 - Tonite Lets All Make Love in London (1968年)
『ロンドン 66-67』 - London '66–'67 (1995年)
『ピンク・フロイド・アンド・シド・バレット ストーリー』 - The Pink Floyd and Syd Barrett Story (2003年)
* 『シド・バレット 独りぼっちの狂気』 - Have You Got It Yet? The Story of Syd Barrett and Pink Floyd (2023年公開) - アート集団「ヒプノシス」のメンバー ストーム・トーガソン監修の映像素材から創られたドキュメンタリー映画
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