その魔球に、まだ名はない

『その魔球に、まだ名はない』

概要

『その魔球に、まだ名はない』（原題: Out of left field）は、アメリカの作家エレン・クレイジスによる児童文学作品です。この作品は、歴史小説シリーズ「The Gordon Family Saga」の第3作目であり、架空の少女ゴードンの視点から、アメリカにおける女性野球選手の歴史を描いています。特に1950年代のリトルリーグという舞台設定を背景に、性別の壁に挑む姿が物語の中心となっています。この作品は、ニューヨーク歴史協会児童歴史図書賞と、オハイオアナ図書賞ミドルグレード・アンド・ヤングアダルト部門で受賞の栄誉に輝いています。

あらすじ

舞台は1957年のアメリカ。小学4年生のゴードンは、ナックルボールとカーブを組み合わせた独特の投球を武器にしており、日系人の友人ピーウィーとともにリトルリーグのトライアウトに臨みます。見事に合格を果たすゴードンですが、彼女のチームへの加入は、当時のリトルリーグにおける性別に関する規則により取り消されてしまいます。

理由はシンプルで、リトルリーグでは男子のみが参加できるという厳然たるルールが存在していたからです。ゴードンは友人たちと共にこの不平等に立ち向かうことを決意し、弁護士からの助言に基づいて、リトルリーグの本部に手紙を書くことにします。しかし、返ってきたのは女性の参加を認めないという冷酷な拒否の言葉であり、代わりにチアリーダーや売店ボランティアとしての参加を提案されてしまいます。

友人ジュールズの助言を受けてゴードンは、かつて存在した女性の野球選手たちの記録を調査し始めます。両親の教育を受け、調査能力も兼ね備えたゴードンは、女性選手たちが活躍した過去を掘り下げます。偉大な選手ジャッキー・ミッチェルやベーブ・ザハリアスの記録を次々に発見し、彼女たちの足跡を辿る過程で、野球の背後に潜む人種差別やルッキズムといった問題にも直面します。

学校の課題として調査結果をまとめたゴードンは、高評価を得て、そのレポートは学校の廊下に展示されることに。これがきっかけで、新聞記者であるジュールズの父がゴードンにインタビューし、記事を新聞に掲載します。これにより彼女の努力は広く知られることになり、ゴードンは再びリトルリーグに手紙を送り、女性野球選手の存在を訴えます。

最終的に、リトルリーグは1959年に性別に関するルールの見直しを検討することを約束しますが、実際のルール変更が行われるのは後の話。その影響として、ゴードンの行動が自分に憧れる後輩に勇気を与え、草野球チームに参加する少女が現れるという、小さな成果を生み出します。

結論

『その魔球に、まだ名はない』は、性別による壁を乗り越えようとする少女の物語を描いており、読者に勇気と希望を与える作品です。ストーリーの中で、女性が自らのステージを切り開いていく様子は、今なお多くの人々に感動を与え続けています。

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