それから

小説『それから』の詳細と背景

夏目漱石によって書かれた小説『それから』は、1909年6月27日から10月14日まで東京朝日新聞と大阪朝日新聞で連載され、翌年1月に春陽堂から書籍として発売されました。漱石の作品群の中で『三四郎』や『門』とともに、前期三部作の一端を成しています。物語は、定職を持たず家族からの支援で暮らす長井代助と、彼の友人平岡常次郎の妻である三千代との複雑な関係を中心に展開します。

あらすじ

物語の主人公、長井代助は裕福な家の次男坊であり、東京帝国大学を卒業したものの、職に就くことなく気ままな生活を送っています。父からの経済的支援に依存しながら、読書や演奏会を楽しむ有閑な日々を送る代助。しかし、彼の生活態度は父からの批判にさらされ、親からは佐川家の令嬢と婚約を勧められますが、代助はそれに乗る気はありません。

さらに、代助は兄嫁の梅子からの好意に甘えつつ、彼女との関係を築いていきます。一方、彼の親友である平岡常次郎は、卒業後に銀行に就職し成功をおさめます。しかし、平岡の同窓生である菅沼の死をきっかけに、妹の三千代を深く思う代助は、二人を結婚させる決断をします。

三千代の結婚生活は幸せとは言えず、子供の死によって彼女は心と体を痛めてしまいます。後に平岡は仕事を失い、借金を抱える事態に直面し、再び代助に援助を求めることになります。代助は愛する三千代を思うあまり、平岡に彼女を委ねるも、平岡の不適切な行動は事態をさらに悪化させます。

代助は自身の想いを三千代に告げるべく、彼女に愛を告白しますが、経済的な自立ができていない自分に対する後悔にさいなまれます。徐々に明らかになる代助と三千代の関係は、平岡に知られ、代助は家族からの勘当や絶縁を宣告され、全てを捨て愛を貫く決意を固めます。

登場人物

• - 長井代助: 小説の主人公。裕福な家の次男として、経済的に恵まれた生活を送る。性格は神経質で、恋愛においても苦悩を抱える。
• - 平岡常次郎: 借金を抱える代助の友人。代助と三千代との関係の中で自身の道を模索し直すこととなる。
• - 平岡三千代: 常次郎の妻で、代助の初恋の相手。彼女の苦悩が物語に深い影響を与える。

映画化と舞台化

1985年には森田芳光監督により映画化され、松田優作が代助を演じました。映画は大ヒットし、多くの映画賞を受賞するなど高評価を受けました。また、2017年にはCLIEにより舞台化され、平野良が代助を演じています。

『それから』は、日本文学の中で特色のある作品であり、文学的な価値だけでなく、世代を超えて愛される作品としての土台を築き続けています。愛と犠牲、誘惑をテーマにしたこの物語は、単なる恋の物語にとどまらず、当時の社会や人々の心情を示す重要な作品でもあります。

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