たいこ腹

たいこ腹（たいこばら）

「たいこ腹」は、古典落語の演目であり、別名として『幇間腹』とも呼ばれています。この演目の原話は、1780年に出版された笑話本『初登』に収められている「針医」という物語に由来します。元は上方落語の作品であり、柳家禽語楼や五代目古今亭志ん生などが主要な演者として知られています。近年では三遊亭小遊三がこの演目を演じることが多く、一方で上方では三代目林家染丸が活躍しています。

あらすじ

物語は、道楽息子の孝太郎というキャラクターが中心です。彼は様々な趣味にのめり込み、その結果、何もすることがなくなってしまったが、善行に励む道を選ぼうと考え、鍼医に弟子入りすることを決意します。彼が修行を始めると、鍼の練習ばかりでは物足りなくなり、ついには「人体実験」を行いたいという衝動に駆られます。

孝太郎はまず、家庭内のペットである猫に鍼を刺すことを試みますが、失敗に終わります。そこで、彼は実験台として幇間の一八を選ぶことにします。彼はお茶屋に行き、一八を二階の一室に呼び寄せます。現れた一八は、過去の悪戯を思い出しつつも、若旦那の指示に従い、恐怖心を抱きながら部屋の中へと入っていくのです。

若旦那が以前挑戦した趣味を並べた後、一八は「鍼をうたせろ」とのリクエストをします。初めは驚いて逃げようとしますが、若旦那が鍼一本につき5万円と新しい着物を提示すると、思わずその気になってしまい、横になってしまいます。

「目が据わっている。手がガクガクだ…大丈夫か？ 南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏…ウギャ！！」と叫びながら、一八は痛みで飛び起きると、鍼が折れてしまったことに気づきます。慌てた孝太郎は『迎え鍼』を打ちますが、それも同じように折れてしまいます。この予想外の展開に逃げ出す若旦那の姿が描かれます。

最後には、悲鳴を聞きつけた御茶屋の女将が階段を上がってきて、事情を聴き、一八に同情します。しかし、彼女の問いには「とんでもない!! 皮が破れて鳴りませんでした」という返答が返ってくる、という滑稽な結末が待っています。

概要

原話の中で、一八は痛みに悶絶しながら若旦那から「おれの針の師匠のところへ行け」と告げられる場面があります。この物語の核心は、一八が実験台にされるシーンですが、やりすぎると笑いどころを逸してしまうため、繊細なバランスが求められる難しいストーリーといえるでしょう。

この演目は、無邪気な実験と、それによって引き起こされる笑いと恐怖が巧みに描かれています。観客に笑いを提供できる一方、実験の結果の悲惨さも意識させることで、より深い印象を与える作品となっています。

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