たそがれのロンドン・タウン

楽曲「たそがれのロンドン・タウン」

ウイングスが1978年に発表した楽曲「たそがれのロンドン・タウン」（原題: London Town）は、同年にリリースされた彼らのスタジオ・アルバム『ロンドン・タウン』に収録されています。この楽曲はアルバムの冒頭を飾るトラックであり、リスナーをアルバムの世界観へと誘う重要な役割を担っています。日本では、アルバム名こそ原題に近い『ロンドン・タウン』として紹介されましたが、この楽曲およびシングルについては「たそがれのロンドン・タウン」という情緒的な邦題が付けられ、広く親しまれることとなりました。

この楽曲は、アルバムからのシングルとしてもリリースされています。シングルカットは1978年8月26日に行われました。これは、アルバム『ロンドン・タウン』からのシングルとしては3枚目にあたるリリースでした。ウイングスはアルバムごとに数曲をシングルとして発表することが多く、この曲もアルバムのプロモーションを兼ねて市場に投入されました。

シングルのB面には、同じくアルバム『ロンドン・タウン』に収められている楽曲「アイム・キャリング」（I'm Carrying）が収録されました。シングル盤のカップリング曲は、そのA面曲の世界観を補完したり、アルバムの中から別の魅力を提示したりする役割を持ちますが、「アイム・キャリング」は「たそがれのロンドン・タウン」とは異なる雰囲気を持つナンバーです。

このシングルは、当時の主要な音楽チャートにおいて、必ずしも大きな成功を収めたわけではありませんでした。アメリカ合衆国では、音楽業界誌『ビルボード』のチャートで最高39位を記録しました。一方、イギリス本国では、音楽週刊誌『ミュージック・ウィーク』のチャートで最高60位に留まっています。これは、ウイングスの過去のシングルと比較すると、やや控えめな成績と言えるでしょう。しかし、チャート順位がその楽曲の芸術的価値やリスナーからの評価の全てを示すわけではありません。

シングルの発売に合わせて、この楽曲のプロモーションを目的としたビデオも制作されました。ミュージックビデオは、楽曲の雰囲気を視覚的に表現し、テレビなどを通じて広く紹介されることで、楽曲の認知度を高める役割を果たします。この「たそがれのロンドン・タウン」のプロモーションビデオには、ウイングスのリーダーであるポール・マッカートニー自身が出演しているほか、ゲストとして俳優のヴィクター・スピネッティが登場しています。ヴィクター・スピネッティは、かつてポールが所属していたバンド、ビートルズ主演の映画『ビートルズがやって来るヤァ!ヤァ!ヤァ!』（A Hard Day's Night）や『ヘルプ!4人はアイドル』（Help!）などでビートルズのメンバーと共演しており、ポールとの旧知の間柄でした。このような著名な俳優の出演は、ビデオに深みと話題性を加えています。

「たそがれのロンドン・タウン」は、ウイングスというバンドの多様な音楽性を示す一例であり、アルバム『ロンドン・タウン』の世界観を構成する重要なピースです。チャートアクションこそ爆発的ではありませんでしたが、その叙情的なメロディーやアレンジメントは、発表から長い時を経ても多くの音楽ファンに愛され続けています。この楽曲は、1970年代後半のポール・マッカートニーとウイングスの活動を振り返る上で、欠かせない一曲と言えるでしょう。

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