ロンドン・タウン

ロンドン・タウン (London Town)

『ロンドン・タウン』は、ウイングスが1978年3月31日に発表した通算6枚目のスタジオ・アルバムであり、ビートルズ解散後におけるポール・マッカートニー名義では8作目にあたります。

この作品の制作は、1977年2月にロンドンの有名なアビー・ロード・スタジオで始まりました。しかし、同年5月からは雰囲気を変え、ヴァージン諸島沖に浮かぶ船上でのレコーディングが行われるという異例の環境で行われました。レコーディングが終盤に差し掛かり、イギリスへの帰国後、ギタリストのジミー・マカロックとドラマーのジョー・イングリッシュがバンドから脱退するという予期せぬ出来事が発生します。これにより、アルバム収録曲の何曲かは、残されたポール、リンダ・マッカートニー、デニー・レインの3人によって完成されることとなりました。特にリンダはこの時期、産休に入っていたため、実質的にはポールとデニーを中心に作業が進められたとされています。

アルバムのジャケット写真はポール、リンダ、デニーの3人のみが写っているにもかかわらず、クレジットには脱退したジミー・マカロックとジョー・イングリッシュもメンバーとして明記されています。これは、彼らがレコーディングの大部分に参加していたことを反映したものと考えられます。

音楽性においては、デニー・レインが持つ伝統音楽への深い造詣が大きく影響しており、アルバム全体にトラッド調の楽曲が多く見られます。また、収録曲の中には「チルドレン・チルドレン」や「子供に光を (Deliver Your Children)」のように、デニーがリードボーカルを担当している楽曲も含まれています。

チャート成績においては、イギリスで最高4位、アメリカでは6週連続で2位を記録しました。しかし、当時のアメリカ市場では、ビージーズが音楽を担当した映画『サタディ・ナイト・フィーバー』のサウンドトラックが驚異的なヒットを記録しており、本作は惜しくもその壁に阻まれ、首位獲得は叶いませんでした。これにより、1973年の『レッド・ローズ・スピードウェイ』から続いていたウイングスの連続全米ナンバーワン・アルバム記録は途絶えることとなりました。それでもなお、全米2位、全英4位という成績は、バンドの人気の高さを証明するものです。また、本作はウイングスのオリジナル・アルバムの中で、デニー・レインとの共作が最も多い作品としても知られています。

収録曲

（特筆ない限りポール・マッカートニー作詞作曲）

• - たそがれのロンドン・タウン - London Town 4:06 （&デニー・レイン）
• - セーヌのカフェ・テラス - Cafe on the Left Bank 3:24
• - アイム・キャリング - I'm Carrying 2:41
• - なつかしの昔よ - Backwards Traveller 1:09
• - カフ・リンクをはずして - Cuff Link 1:53
• - チルドレン・チルドレン - Children Children 2:20 （&デニー・レイン）
• - ガールフレンド - Girlfriend 4:38
• - 別れの時 - I've Had Enough 3:00
• - しあわせの予感 - With a Little Luck 5:43
• - 伝説のグルーピー - Famous Groupies 3:34
• - 子供に光を - Deliver Your Children 4:15 （&デニー・レイン）
• - ネーム・アンド・アドレス - Name and Address 3:06
• - ピンチをぶっ飛ばせ - Don't Let It Bring You Down 4:31 （&デニー・レイン）
• - モース・ムースとグレイ・グース - Morse Moose and the Grey Goose 6:24 （&デニー・レイン）

ボーナス・トラック

1987年CD盤
ガールズ・スクール - Girls' School 3:15 （英国・日本盤ショート・エディット・バージョン）
1993年ポール・マッカートニー・コレクション盤
ガールズ・スクール - Girls' School 4:34 （オリジナル・バージョン）
夢の旅人 - Mull of Kintyre 4:41 （&デニー・レイン）

演奏者

ポール・マッカートニー – ボーカル、ギター、ベース、キーボード、ドラム、パーカッション、ヴァイオリン、フラジオレット、リコーダー
リンダ・マッカートニー – ボーカル、キーボード、パーカッション
デニー・レイン – ボーカル、ギター、ベース、フラジオレット、リコーダー、パーカッション
ジミー・マカロック – ギター、パーカッション
ジョー・イングリッシュ – ボーカル、ドラム、パーカッション、ハーモニカ

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