たまゆら (テレビドラマ)

連続テレビ小説『たまゆら』

『たまゆら』は、1965年4月5日から1966年4月2日にかけて放送された、NHKの連続テレビ小説第5作です。この作品は、川端康成が初めてテレビドラマのために書き下ろしたもので、全310回にわたって放送されました。

物語の概要

物語は、定年を迎えた老人が『古事記』を手に、新たな人生のスタートを切る旅に出るという内容です。この主人公を通じて、人生の意味や家族の絆、故郷の美しさなどが描かれています。川端康成はこの作品の原作を執筆する際、他の仕事を一時中断し、実際にロケに同行して自らエキストラとして出演したことでも知られています。

ロケーションと宮崎

特筆すべきは、ドラマの舞台が宮崎県および日南海岸の観光地で多くロケが行われた点です。川端康成が取材旅行で訪れた宮崎の風景に感銘を受け、その美しさをドラマの背景として選定しました。特に大淀川の夕日が絶賛され、多くのシーンでその美しい景色が描かれました。第2話では、矢野周一夫妻が橘公園のロンブルテントから夕日を眺める場面が放送され、視聴者に強い印象を与えました。

このドラマの放送後、宮崎は新婚旅行の人気の目的地となり、「観光宮崎」のブームが広がるきっかけとなりました。

キャストとスタッフ

主演を務めたのは笠智衆であり、彼のテレビドラマ初出演作となりました。また、男性の単独主演作品としては、本作放送後しばらく途切れてしまったことも特筆されます。視聴率は、初回30.2%、最高44.7%、平均33.6%を記録し、関東地区での人気を証明しました。

キャストには、妻ふじ子役の加藤道子や、長男・治彦を演じた佐竹明夫など、さまざまな俳優が名を連ねています。特に、川端康成は通行人役として特別出演し、話題を呼びました。また、スタッフ陣では、原作の川端康成以外にも、脚本を担当した山田豊と尾崎甫、演出の畑中庸生と岸田利彦などが重要な役割を果たしました。

映像の保存

しかし、放送当時のVTRは高価な機器を用いて録画されていたため、保存が難しかったこともあり、全話のマスターテープは他の番組に利用されてしまいました。現存するのは撮影風景を収めたニュースフィルムのみで、再放送やソフト化が不可能な状況となっています。

結び

『たまゆら』は、川端康成による文学作品がテレビドラマ化された特別な作品であり、その美しい風景や感動的なストーリーで多くの視聴者に影響を与えました。再放送が不可能なため、初回視聴を果たした方々の記憶に残る作品となっています。

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