新婚旅行

新婚旅行：歴史と変遷

新婚旅行とは、結婚したばかりの夫婦が二人で楽しむ旅行のことです。英語では「ハネムーン」と呼ばれ、蜂蜜酒に由来する言葉です。中世ヨーロッパでは、新婚夫婦は蜂蜜酒を飲み、子作りに励む期間として約1ヶ月間を過ごしました。この習慣が、新婚旅行の起源の一つと考えられています。

語源と意義

「ハネムーン」の語源は、古代から中世にかけてヨーロッパで新婚夫婦が飲んだ蜂蜜酒に関連しています。蜂蜜酒には、精力増強や多産への願いが込められていました。新婚旅行の意義は時代とともに変化してきましたが、夫婦二人の新たな門出を祝うとともに、今後の生活への期待を高める大切な時間となっています。日本では、新婚旅行中に生まれた子供を「ハネムーンベビー」と呼ぶこともあります。

欧州における新婚旅行

19世紀以降、英国では結婚式後に親族を訪問する「Bridal tour」という習慣がありました。産業革命による鉄道網の発展と消費社会の進展により、中産階級にも新婚旅行が普及しました。遠方への旅行が容易になったことで、「Honeymoon」と呼ばれる、新婚カップルだけの刺激的な旅行が定着していきました。

日本における新婚旅行

明治時代

1889年、井上円了が「Honeymoon」を「新婚旅行」と訳して新聞紙上で紹介したことが、日本でこの言葉が使われた最初の例とされています。その後、小説などでも新婚旅行が描かれるようになり、高級保養地への旅行は上流階級の風習でした。坂本龍馬夫妻の薩摩への旅行が日本初の新婚旅行とする俗説もありますが、それ以前の例も存在するとの説もあります。

大正～昭和前期

大正から昭和前期にかけて、鉄道網の発展により、上流階級を中心に新婚旅行が普及しました。皇室関係者も新婚旅行を行っていましたが、旧民法下では家制度の影響が強く、「夫婦二人の自由旅行」は否定的に見られることもありました。

昭和中期

1947年の民法改正により夫婦の対等性が確立され、恋愛結婚の増加、高度経済成長期の消費拡大を背景に、新婚旅行は一般化しました。旅行会社によるセット旅行商品も登場し、温泉地や宮崎県などが人気となりました。宮崎県は皇室の訪問やメディアによるイメージ戦略によって、新婚旅行の目的地として人気を博しました。

昭和後期

1964年の海外旅行自由化、1973年の変動相場制移行、ジャンボジェット機の導入などを背景に、ハワイなどが人気の新婚旅行先となりました。昭和60年代には、多様な海外旅行先が選ばれるようになりました。

平成時代

1990年代から2000年代にかけては、円高やバブル景気崩壊後の景気低迷などの影響を受け、新婚旅行の形態は多様化しました。豪華な海外旅行や地味婚、延期するケースなどが見られました。一方で、高齢者層による「遅れてきたハネムーン」も増加しました。

まとめ

新婚旅行は、時代や社会情勢、経済状況を反映しながら、その形態を変化させてきました。当初は限られた上流階級の風習でしたが、現代では様々なスタイルの新婚旅行が選択できるようになっています。これからも、夫婦それぞれの価値観やライフスタイルに合わせて、多様な新婚旅行が展開していくと考えられます。

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