たわみ翼

たわみ翼とは

たわみ翼（たわみよく、英: warping wing）は、主翼が変形してたわむことができる特性を持つ航空機の設計の一つで、ねじり翼やひねり翼とも呼ばれています。この技術は、主翼が意図的にたわむことによって、機体をロールさせることができる特性を持っています。つまり、機首と機尾を結ぶ前後の軸を回転中心として横転運動を行わせることが可能です。

例えば、飛行機を右にロールさせる際には、左翼をねじり上げ、右翼をねじり下げます。この操作により、左翼の揚力が増し、機体は右に傾くことになります。これは、たわみ翼が補助翼と同様の働きを果たすことを示しています。また、方向舵を使って飛行機が左右に首を振る（ヨーイング）ことも可能ですが、これだけでは旋回中に機体が横滑りしてしまうことがあります。そのため、たわみ翼や補助翼の助けを借りて、適切にロールすることで、スムーズな旋回が実現されます。

構造と操作方法

たわみ翼の具体的な設計や操作方法は、機種によって異なります。例えば、ライト・フライヤー1号の操縦士は、腹ばいで操縦桿の位置に取り付けられた「鞍」を動かして主翼全体をたわませる仕組みを採用していました。このように、操縦者が直接的に翼を変形させることで、機体の挙動を制御します。

歴史的背景

たわみ翼の概念は、1890年代末期にライト兄弟によって実用化されました。彼らは鳥の飛行を観察し、その際に必要な操縦の仕組みに気付くと、厚紙で作った空箱を操作する中でたわみ翼のアイデアを思いつきました。この発明は、（ピッチ、ヨーだけでなく）ロール方向の操縦を可能にし、彼らの成功には欠かせない要素となりました。

初期の飛行機操縦において、他の飛行家たちは旋回時の横滑りの課題に苦労しました。ライト兄弟の成功を見た彼らは、ロールの重要性に気付き、徐々にこの技術を取り入れるようになります。しかし、たわみ翼そのものを採用する機体はあまり多くなく、その理由にはライト兄弟が特許を持っていたことが挙げられます。

1903年の飛行機の成功後、エルロンが発明されると、たわみ翼は急速に時代遅れとなり、第一次世界大戦後にはほとんどの飛行機から姿を消しました。たわみ翼を持つ初期の機体には、ライト兄弟のグライダーやブレリオ XI、ドイツのタウベなどがあります。

欠点と技術的進展

たわみ翼はその複雑な構造のため、エルロン方式に比べて操作が難しくなります。また、翼の可撓性を確保するため、強度や厚さが制限されるという欠点もあります。

近年では、NASAによって研究されている「Active Aeroelastic Wing」（能動空力弾性翼）が、現代のたわみ翼とも言われています。この技術では、飛行機の主翼を意図的に変形させ、空気の力を利用して操縦性を向上させる試みが行われています。たとえば、F/A-18の主翼をより柔軟なものに変更し、その形状を調整することで操作性を向上させる実験が実施されています。

このように、たわみ翼はその歴史的背景に加えて、現代における航空機設計にも影響を与え続けています。

もう一度検索