だいち

陸域観測技術衛星「だいち」（ALOS）

陸域観測技術衛星「だいち」は、宇宙航空研究開発機構（JAXA）によって開発された、地球観測を目的とした衛星です。主に地図作成、地域環境の観測、災害時の状況把握、地下資源の調査に利用されており、多様な用途に応じて設計されています。2006年1月24日に打ち上げられ、運用期間中に650万シーン以上の画像を取得しました。

開発と打ち上げ

だいちの開発はNEC東芝スペースシステムによって行われ、H-IIAロケット8号機によって宇宙へと送り出されました。その後、さまざまな自然災害や環境問題の分析に活用されており、特に新潟県中越沖地震や四川大地震等の観測に貢献してきました。また、ブラジルの熱帯雨林における違法伐採の監視や、日本国内での不法投棄の監視活動にも寄与しています。

主な任務と機能

地図作成

だいちは高度な衛星センサーを使用し、さまざまな地域での細かい地形情報を収集します。特に1/25000スケールの地形図を作成するためのデータ取得に特化しており、国土地理院などの機関と連携して、高精度の地形図を提供しています。

地域観察

地球上の異なる地域の日常的な環境観察を行い、それに基づいた持続可能な開発を可能にします。これにより、地域ごとの自然環境を理解し、適切な政策立案に役立てることができます。

災害状況把握

国内外で発生する大規模災害に迅速に対応し、被災地の状況把握に努めています。これにより、災害管理や復興支援に貢献しています。

資源探査

衛星から得られたデータを用いて、石油や天然ガスなどの地下資源の探査にも役立てています。地形の特徴を分析することで、資源の埋蔵可能性を評価しています。

高度な観測機器

だいちの特筆すべき点は、1つの衛星に複数の観測センサーを搭載していることです。これにより、広域を連続的に撮影でき、他国の衛星と比較しても高いスナップショットデータの取得が可能です。

PRISMセンサー

パンクロマチック立体視センサーPRISMは、可視光線を用いて地表の詳細な情報を取得します。幅70kmの範囲を2.5mの高解像度で観測できるため、地表の凹凸についても正確なデータを得ることができます。

AVNIR-2

AVNIR-2は、可視光から近赤外線までを利用し、複数の波長で地表の樹木や水域の特性を判別します。災害時に素早く対応するため、観測角度の改善も図られており、緊急時でも迅速にデータ取得できます。

PALSAR

フェーズドアレイ方式Lバンド合成開口レーダーPALSARは、天候や時間に関わらず地表を観測できる能力を持っています。特に、植生などを透過して地表の変化を測定する際に威力を発揮し、詳しい観測が可能です。

環境監視の取り組み

だいちは環境保護にも寄与しており、2007年からはアマゾンの違法伐採の監視を始め、10日以内にデータをブラジルに提供する体制を構築しました。また、2008年以降は日本各地での不法投棄を監視する取り組みも進めています。

運用の経過

具体的な運用の問題も経験しましたが、国土地理院との共同開発によりノイズの軽減がなされ、データの精度が向上しました。2011年の東北地方太平洋沖地震では、迅速に観測データを提供し、国内外の関係機関に情報を伝えました。

終息と後継機

2011年、だいちは運用を終了しましたが、機体はその後もメンテナンスや復旧作業を試みられました。後継の衛星「だいち2号」は、さらなる革新と観測技術の向上を目指しています。

だいちはその運用を通じて、地球環境の理解、災害への迅速対応、資源探査といった重要な役割を果たし、宇宙からのデータ利用を深化させる基盤を築いてきました。

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