ちしゃ医者

ちしゃ医者（ちしゃいしゃ）

概要

「ちしゃ医者」は上方落語の中でも古くから親しまれている演目の一つです。この話は、初めに噺本『太郎花』に記載されたもので、中国の古典『笑府』にも同様のエピソードが存在します。ストーリーは、村の藪医者が巻き込まれる思わぬ騒動を中心に展開され、ユーモアとともに医者の弱さが描かれている点が特徴です。

あらすじ

物語は深夜、村人が急病を抱えた者のため、赤壁周庵という藪医者を呼びに行くシーンから始まります。しかし、周庵の下男である久助は、医者の腕を疑い、村人に「この医者に診てもらったら、かえって危険だ」と言い放ちます。ところが村人はすでに病人が死にかけているため、最後の脈を取ってもらうために医者が必要だと反論します。そこで、周庵は仕方なく久助と村人に駕籠を担がせ、現場に向かうことになります。

途中で、病人が完全に亡くなったことが判明し、村人は「もう先生は要りません」と言って立ち去ります。一人残され、周庵は途方に暮れ「このままでは駕籠を持つ人がいなくなる」と嘆きます。久助は「先生、自分で片棒を担いでください」とさらに困難を突きつけます。周庵は当然不満を抱きますが、そんな彼の前に百姓が現れ、駕籠を担ぐことを申し出ます。しかし、百姓はその代わりに、肥料の入った桶を駕籠に載せていくと言います。

桶を抱え込まされた周庵は、その臭いにも閉口し、さらに桶の中身が揺れるたびに周囲が騒然とします。百姓が家に立ち寄ると、近所のお婆さんが「今日は医者を含む何かお礼は？」と尋ねてきます。百姓はその質問に「医者だけだ」と答えますが、これを「ちしゃ」（レタス）と聞き間違えたお婆さんは、駕籠に入り込み、桶の中身を周庵の顔にかけてしまいます。周庵は怒り狂い、お婆さんを蹴り倒す大騒ぎとなります。

その後、お婆さんの悲鳴を聞いた息子が駆けつけ、周庵を引きずり出して殴りつけます。「何をしているのか！」と周庵は反論しますが、息子は「お前が母を傷つけるとは何事だ！」と怒ります。久助は冷静に「足でよかった。手だったら、命がなかった」と一言添え、場面を締めるのです。

結論

いわゆる「駕籠医者」としても知られるこの演目は、他の類似した話と同様の構造を持ちながらも、ボケとツッコミの絶妙なやり取りを楽しむことができます。名人たちによる演じ方もさまざまで、特に初代桂春團治によるナンセンスな演出が今日に伝わっている点も見逃せません。『ダッフンダー』として受け継がれる中で、笑いの文化がどのように育まれてきたのかを感じることができる昔ながらのストーリーです。

もう一度検索