ちふり型巡視船

ちふり型巡視船：朝鮮戦争と日本の海上保安

1950年代初頭、朝鮮戦争の勃発を受け、日本の海上保安体制強化のため建造されたのが、ちふり型巡視船です。450トン型巡視船の改良型として誕生した本型は、海上保安庁の運用能力向上に大きく貢献しました。

誕生の背景：朝鮮戦争とマッカーサー書簡

1949年度にはあわじ型、1950年度にはれぶん型巡視船が建造されましたが、朝鮮戦争の勃発（1950年6月25日）を受け、同年7月8日、ダグラス・マッカーサー連合国軍最高司令官から警察力・海上警備力の増強を求める緊急指令（マッカーサー書簡）が発せられました。

これを受け、海上保安庁法の制限が緩和され、巡視船の増強計画が加速。当初計画されていた30隻の中型巡視船に加え、追加建造が決定されました。この追加建造計画において、れぶん型の設計を改良したのち、ちふり型巡視船5隻が建造されたのです。

設計と改良：れぶん型からの進化

ちふり型は、れぶん型450トン型をベースに、石川島重工の基本計画、国際船舶工務所の詳細設計によって建造されました。燃料消費量の削減と速力向上を目指し、船型は全長を長く、幅を狭くする設計に変更されました。しかし、この変更により動揺性能の低下という課題も発生しました。そのため、東京大学工学部の元良誠三教授考案のMN式減揺水槽による運用試験が行われ、成果を上げました。

重量軽減と重心降下はれぶん型と同様でしたが、溶接構造による工事の困難さを教訓に、鋲接構造を一部採用することで工期の短縮を図っています。また、火災対策や水密隔壁の設置など、ダメージコントロールの強化も図られました。

装備：レーダーと兵装

搭載レーダーは船によって異なり、RCA社製、コッサー式、ケルビン・ヒューズ社製と、複数の機種が採用されました。当初は極東委員会の意向により非武装でしたが、1952年には「しきね」で3インチ単装緩射砲と20mm単装機銃の搭載試験が行われ、その後、順次兵装が搭載されました。

運用とその後：老朽化と代替

ちふり型5隻は、建造所の事情により建造順序が前後しましたが、海上保安業務に貢献しました。しかし、老朽化に伴い、1979年までに1,000トン型であるしれとこ型などに更新され、退役しました。

メディアへの登場：ウルトラQとゴジラ

ちふり型巡視船は、特撮作品にも登場しています。「しきね」は『ウルトラQ』第21話で怪獣ボスタングと戦闘を繰り広げる場面、「こうず」と「しきね」は『ゴジラ』でゴジラ探索に携わる場面で活躍しました。いずれも海上保安庁の全面協力のもと、実船が使用されています。

まとめ：日本の海上保安史における貢献

ちふり型巡視船は、朝鮮戦争という国際情勢の変化を背景に、日本の海上保安体制強化という重要な役割を果たしました。その設計、装備、運用、そしてメディアへの登場は、戦後日本の海上保安史において重要な位置を占めるものです。本稿が、ちふり型巡視船、ひいては日本の海上保安の歴史を理解する一助となれば幸いです。

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