つま恋ガス爆発事故

つま恋ガス爆発事故の概要

1983年11月22日12時48分、静岡県掛川市にあったレクリエーション施設「つま恋」（現：つま恋リゾート 彩の郷）内の飲食店「満水亭」で、大規模なLPガス爆発事故が発生しました。この事故により、14名が死亡、27名が重軽傷を負うという、日本のLPガス爆発事故史上最悪の人的被害となりました。

事故が発生した満水亭は、当時、夏季はバーベキューハウス、冬季は和風レストランとして営業していました。事故当時は冬季営業中で、鍋料理を提供していました。

事故の詳細

事故の原因は、満水亭の模様替え作業におけるガス栓の閉め忘れでした。夏季から冬季への模様替えの際、調理器具を繋ぐガス栓が99箇所中31箇所も開いたまま放置されていました。工事期間中はガスの元栓が締められていたため、このミスは発覚しませんでした。

模様替え後、初めての営業日となった11月22日、調理場の湯沸かし器を使用するため元栓を開放したところ、開いたままになっていたガス栓から大量のガスが漏れ出しました。この時漏れたガスは、1日の平均使用量の2倍にも達していました。

ガス漏れ警報機が作動し、従業員が責任者に連絡しましたが、避難誘導やガスの元栓を閉めるなどの措置は取られませんでした。店内にいた客もガスの臭いに気づき、タバコを控えるなどの行動をとっていましたが、その直後、漏れたガスが何らかの火種に引火し、大爆発が発生しました。爆発は2度に渡って発生し、建物は全壊しました。

爆発直後にはガスの元栓が閉められ、消防隊による消火活動が行われ、13時55分に鎮火しました。

事故の影響

この事故を受けて、施設の親会社である日本楽器製造（現：ヤマハ）とその関連会社であるヤマハ発動機は、一時的にテレビCMなどの広告活動を自粛しました。また、日本楽器製造提供のラジオ番組では、提供アナウンスをカットし、公共広告機構（現：ACジャパン）のCMに差し替えられました。その後、日本楽器製造は速やかに事故の責任を認め、遺族や負傷者に賠償金を支払いました。

また、この事故を契機に、LPガス事業者は家庭用ガス栓をヒューズコックに切り替えるなど、安全対策の強化を図りました。既存の設備についても、安全点検の際にパンフレットなどで早期交換を促すようになりました。

店舗の問題点

事故が発生した満水亭では、1977年の開店後、ガス管の増設が液化石油ガス法で義務付けられている県知事への届け出なしに行われていました。さらに、ガス納入業者が事故の9ヶ月前にガス管の検査をしようとした際、店舗側の協力が得られず、十分な点検は行われませんでした。また、緊急遮断装置も設置されていませんでした。これらの改装工事は、経費節減のために従業員のみで行われていたことも判明しました。

この事態を受け、食堂長ら従業員5人が逮捕・起訴され、翌1984年に全員に執行猶予付きの有罪判決が下されました。

行政と事業者の対応

この事故を重く見た当時の通産省は、「つま恋LPガス事故対策委員会」を設置し、翌年4月に報告書を取りまとめました。

また、日本LPガス連合会は、この事故を受けて、都市ガス用に開発されたばかりのマイコンメーターのプロパンガスへの導入を決定し、1987年から置き換えが進められました。

事故から得られた教訓

つま恋ガス爆発事故は、ずさんな安全管理と法令遵守意識の欠如が引き起こした悲劇でした。この事故を教訓に、LPガス業界全体で安全対策が見直され、法規制の強化や安全機器の普及が進められました。この事故は、ガスを扱う上での安全管理の重要性を改めて社会に認識させる出来事となりました。

もう一度検索