つり革

つり革についての詳細

つり革は、鉄道車両やバスなどの公共交通機関で、立ったまま乗車する際に身体を支えるための重要な支持具です。正式には「つり手」としてJIS E 4011に定義されているこの装置は、特に日本では広く使われていますが、海外では手すりが多く用いられることが一般的です。つり革の設計や規格については、欧米では手すりに関連する基準が設定されていますが、つり革自体についての具体的な規格は存在しません。

構造と材質

つり革の基本的な構造は、支持部分となるストラップと握る部分で構成されています。昔は革製のものも存在しましたが、現在ではポリ塩化ビニル被覆のキャンバスやナイロンストラップ、プラスチック製の握りが一般的です。大阪市に本社を置く三上化工材株式会社が製造する「トヨサンベルト」が主流となり、国内市場でのシェアの過半数を占めています。最近の地下鉄では、避難時の安全を考慮し、火炎にさらされても滴下しにくい素材が使用されています。

握り部の形状と多様性

握り部は一般的に樹脂製で、さまざまな形状のものがあります。例えば、丸型、卵型、三角形、四角形といった基本の形状から、ミッキーマウス型や心型といったユニークなデザインのものまで、種類は多岐にわたります。また、形状によって取り付けの角度も異なり、乗客の使い勝手に影響を与えます。特に、円形の握りは進行方向に平行に配置されることが多く、三角形の握りは直交する方向で取り付けられることが一般的です。これによって、握りやすさも異なると言われています。

色やデザインの選択

日本のつり革は、主に艶のある白系や明るい灰色が一般的です。しかし、優先席近くのつり革には視認性を高めるためにオレンジや黄色が採用されることが増えてきました。さらに、最近では車両のデザインに合わせた色合いのつり革も見られるようになっています。

設置と利用の実態

つり革自体の価格は、通常2500円程度で新品が購入できますが、中古市場では100円から200円で取引されることもあります。つり革の設置方法にも工夫が施されており、背の低いお子様が使いやすいよう、長さを異にするつり革を交互に配置する例が増えています。また、バスと電車では設置方法が異なり、バスでは握りが細めで直径も小さめのつり革が使われることが多いです。

一方、ドア周辺のつり革の設置は、混雑時に乗降を妨げず、かつ安全性を保つ必要があります。この点で、国鉄やJRは、混雑時に支障を来さないようつり革の設置を制限してきましたが、安全確保の観点から、後に改修して取り付けるケースが多く見られます。特にJR九州の813系では、ドアスペースに円形のつり革が配置されており、混雑時の負担を軽減する工夫が施されています。

結論

つり革は、単なる支持具以上の役割を持ち、多様なデザインや取り付け方が採用されています。デザイン性だけでなく、利用者の安全性や快適性も考慮されたつり革は、公共交通機関にとって欠かせない存在だと言えるでしょう。

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