てのひらの闇

『てのひらの闇』あらすじと詳細解説

藤原伊織の推理小説『てのひらの闇』は、企業の闇と人間の業を描いた重厚な作品です。1999年に『オール讀物』で連載され、単行本化の際に改題されました。2000年には日本推理作家協会賞にノミネートされ、2001年には舘ひろし主演でテレビドラマ化もされています。

物語の始まり

物語の主人公は、飲料メーカー「タイケイ飲料」の宣伝部課長である堀江雅之。彼は会社の早期退職勧奨を受け入れ、退職を間近に控えていました。そんなある日、堀江は会長の石崎に呼び出されます。石崎は趣味で撮影したという人命救助の映像を見せ、これをCMにできないかと相談を持ちかけました。しかし、堀江は映像がCG合成であることを見抜き、石崎にそれを伝えます。石崎は「感謝する」という謎の言葉を残し、その日の夜に自宅で首を吊って自殺します。遺書には業績不振の責任を取る旨が書かれていました。

事件の謎

会長の自殺は、堀江が映像の秘密を暴いたせいなのか？堀江は自問自答し始めます。さらに、会長室のテープと堀江が内密にダビングしたテープがなくなっていたことから、堀江は会長の自殺が自分の知らない悪意によるものではないかと直感します。物語は、堀江が会長の死の真相を追う中で、会社の内部に潜む闇と、過去の因縁が複雑に絡み合っていく様子を描いていきます。

登場人物

タイケイ飲料

堀江雅之：宣伝部制作担当課長。かつては支店営業課長だった。退職勧奨を受け入れ退職間近。過去に暴力団組長の息子だったという過去を持つ。
石崎博久：会長。映像がCG合成であることを見抜かれた日の夜に自殺。過去に堀江をスカウトした人物。
大原真理：宣伝部主任。夫はフリージャーナリスト。
真田郁夫：宣伝部部長。
柿島隆志：取締役経営企画部長。堀江の能力を高く評価している。
佐久間：宣伝部媒体担当。
隅田：宣伝部市場調査担当。
富沢：宣伝部業務管理課営業・支店窓口担当。退職勧奨を拒否している。

その他

加賀美順子：女優。過去にタイケイ飲料のCMでミスを犯した。
与田亮介：エコノミスト。石崎との面識はないと主張。
佐伯貴恵：加賀美順子の妹。幼児転落事故の母親。
ナミ：バー「ブルーノ」の経営者。
マイク：ナミの異父弟。18歳。
石崎博光：石崎会長の息子。建築家。
坂崎大吾：塩田組四代目組長。堀江を「若」と呼ぶ。
杉野邦夫：吉永興産社長。
菊村和也：勝沼組若頭。
佐藤則夫：衆議院議員。与党幹事長。
佐伯達夫：加賀美順子の父親。佐伯組二代目組長。
勝沼英樹：吉永興産の取締役。
堀江秀之：雅之の父親。塩田組三代目組長。
大宮正三：吉永興産副社長。

作品の特徴

『てのひらの闇』は、企業の内部抗争、過去の因縁、そして人間の心理を巧みに描いたミステリー作品です。主人公の堀江が、複雑な人間関係の中で真実を追求していく姿が読者の心を掴みます。また、物語の舞台となる企業の描写や、登場人物たちの過去の出来事が、物語に深みを与えています。

テレビドラマ

2001年には、テレビ東京系列の「女と愛とミステリー」でテレビドラマ化されました。舘ひろしが主演を務め、原作の雰囲気を忠実に再現したことで、多くの視聴者から高い評価を得ました。ドラマでは、原作の持つサスペンスフルな展開に加え、映像ならではの演出が加わり、より一層物語を盛り上げています。

まとめ

『てのひらの闇』は、緻密な構成と魅力的な登場人物、そして先の読めない展開が魅力の傑作ミステリーです。企業の闇と人間の業を深く掘り下げた作品として、多くの読者に支持されています。未読の方はぜひ、手に取ってその世界観を堪能してください。

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