とかち型巡視船

とかち型巡視船：日本の海洋を守る、新たな一歩

海上保安庁が運用していたとかち型巡視船は、1968年にPM型に分類変更された350トン型の巡視船です。この船級は、戦後の日本が主権を回復した後に、日本の海域の特性を踏まえた独自の設計で建造された点に大きな意義があります。それまでの巡視船は、連合国軍最高司令官総司令部（GHQ）の命令により、アメリカ沿岸警備隊の設計に基づいて建造されており、必ずしも日本の海域の条件に最適化されていませんでした。

日本の海を守るための挑戦

サンフランシスコ平和条約発効後の1953年度、海上保安庁は独自の設計による巡視船の建造に着手しました。当初は1200トン型の大型巡視船や600トン型巡視船の建造も計画されていましたが、予算上の制約により、350トン型巡視船のみが建造されることになりました。この350トン型巡視船が、とかち型巡視船の始まりです。

過酷な環境に対応する設計

とかち型巡視船の設計では、それまでの270トン型巡視船の問題点が改善されています。270トン型は、GHQの要求に基づいて設計されたアメリカ沿岸警備隊のアクティブ級を参考に建造されましたが、日本の近海の海況には不十分な点がありました。そのため、とかち型では船型を拡大し、耐航性を高めるために船首部の乾舷を高めたレイズド・デッキ型が採用されています。

さらに、北方海域での運用を想定し、流氷の中でも航行できるよう、船首尾部に中間肋骨を追加、外板の厚さを2ミリ増すなど、耐氷構造が強化されました。また、寒冷地での運用に耐えるよう、蒸気サーモタンク方式の暖房や自動発停ポンプ、清水および海水重力タンクの廃止など、凍結防止対策も施されています。

性能と武装

GHQによる速力制限がなくなったことで、当初は定格出力で18ノットの速力を目指していましたが、スペックダウンにより16ノットとなりました。主機関には、池貝鉄工の4サイクルディーゼルエンジンが搭載され、2番船以降は過給器付き機関を採用しました。また、本型から船内電源が交流化されています。武装は、60口径40mm単装機関砲が後日装備されました。

日本の海洋安全保障への貢献

とかち型巡視船は、GHQの設計から脱却し、日本の海域の特性に最適化された初めての巡視船の一つです。その設計思想と性能は、後の巡視船の設計に大きな影響を与え、日本の海洋安全保障に大きく貢献しました。耐氷構造や凍結防止対策など、過酷な環境下での運用を考慮した設計は、日本の海洋における多様なニーズに対応できる設計思想の礎となりました。とかち型巡視船は、日本の海洋を守るための技術開発と、その努力の証と言えるでしょう。

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