とげまる

スピッツ13thアルバム『とげまる』：多彩な楽曲とセルフプロデュース作品の魅力

2010年10月27日、ユニバーサルミュージックより発売されたスピッツの13枚目のオリジナルアルバム『とげまる』。前作『さざなみCD』から約3年ぶりとなる本作は、その多様な楽曲と制作背景から、スピッツの音楽性を深く探求できる作品となっています。

タイアップ曲満載、そしてセルフプロデュースの挑戦

『とげまる』最大の特徴は、タイアップ曲の多さです。過去最多となるCMソングや映画主題歌が複数収録されており、それぞれの楽曲が持つ雰囲気や世界観が、アルバム全体に多様な彩りを添えています。さらに、オリジナルアルバムとしては『惑星のかけら』以来18年ぶりとなる、完全セルフプロデュース楽曲を2曲収録。スピッツのクリエイティブな一面を、より深く垣間見ることができるでしょう。

個性豊かな楽曲群：シングル曲からアルバムオリジナルまで

アルバムには、先行シングルとしてリリースされた「若葉」「君は太陽」「つぐみ」「シロクマ」「ビギナー」に加え、アルバムのために書き下ろされた新曲が多数収録されています。

「ビギナー」: ゆうちょ銀行CMソングとして親しまれた、ポップでキャッチーな楽曲。
「シロクマ」: メナード「イルネージュ」CMソング。印象的なメロディーと歌詞が、リスナーの心に深く刻まれます。
「つぐみ」: NTTコミュニケーションズ「ミュージコ」CMソング。MV撮影時のエピソードも有名です。
「恋する凡人」: ライブバージョンとは異なるアレンジが施され、アルバムに新たな魅力を与えています。舞台作品への挿入歌としても使用されています。
「新月」: シューゲイザー的なアプローチを試みられた楽曲。アルバムの完成度を高めるため、レコーディングの最後に制作されました。
「花の写真」: 「つぐみ」のカップリング曲として人気を博した楽曲です。
「幻のドラゴン」: ブリヂストン「ブリザック」CMソング。力強いサウンドが特徴です。
「TRABANT」: 旧東ドイツの大衆車名に由来する楽曲。チェッカーズやネオGSからの影響も感じられる、聴き応えのある一曲です。ほぼ一発録りでレコーディングされたという逸話も興味深い。
「聞かせてよ」: 「若葉」と同時期にレコーディングされた、初期段階で制作された楽曲です。
「えにし」: ヤマザキ「ランチパック」CMソング。親しみやすいメロディーと歌詞が印象的です。
「若葉」: 映画『櫻の園』主題歌。
「君は太陽」: 映画『ホッタラケの島』主題歌。アルバムのラストを飾るシングル曲は、「チェリー」以来14年ぶりのこと。
* 「探検隊」「どんどどん」: セルフプロデュース作品。スピッツのクリエイティビティが光る、実験的な楽曲です。

また、アルバムには「オケラ」と「まもるさん」というシングルカップリング曲も収録されています。さらに、アナログ盤にはこれらの楽曲に加え、シングル「若葉」と「君は太陽」のカップリング曲が収録された、2枚組限定盤もリリースされました。

アルバムジャケットと制作陣

『とげまる』のジャケット写真は、先行シングルと同様、かくたみほ氏が担当。モデルには日向千歩さんが起用されています。アルバム名の候補には「あかりちゃん」もあったというエピソードも興味深い点です。

唯一無二のスピッツサウンド

『とげまる』は、スピッツのアルバムの中で唯一、フェードアウトの楽曲がないという特徴も持っています。この点も、アルバム全体の構成やサウンドデザインに意識的に取り組まれた証と言えるでしょう。

まとめ

『とげまる』は、多様な楽曲、セルフプロデュース作品、そしてタイアップ曲など、スピッツの幅広い音楽性と創作意欲が凝縮された、聴き応えのある作品です。それぞれの楽曲に込められたメッセージや背景を知ることで、より深い感動と理解が得られることでしょう。スピッツのファンはもちろん、初めて聴くリスナーにとっても、多くの発見と魅力を感じることができる一枚です。

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