とりぱん

とりのなん子の自然観察エッセイ『とりぱん』

『とりぱん』は、漫画家・とりのなん子氏が描く、自然観察エッセイ漫画です。講談社の漫画雑誌『モーニング』にて2005年から連載されており、2020年10月時点で累計発行部数は130万部を突破しています。

作品の特徴

本作は、作者であるとりのなん子氏の日常を、4コマ漫画形式で描いています。舞台は東北地方のとある街で、実家や仕事場の庭に餌台を設置し、そこに訪れる野鳥たちを観察する様子が中心です。タイトルは、庭に来る野鳥への餌としてパンが用いられていることに由来します。

物語が進むにつれて、登場する動植物は野鳥にとどまらず、猫や昆虫、羊など多岐にわたります。また、四季折々の風景や、作者の身の回りで起こる出来事も描かれ、読者は自然の美しさや面白さを身近に感じることができます。

各話は4ページ程度で構成されており、1ページを使った導入から始まり、タイトルがつけられた4本の4コマ漫画を挟み、再び1ページを使ったエッセイ風の終わり方をするのが特徴です。4コマ漫画は、登場する野鳥や動物たちがデフォルメされ擬人化されており、ユーモラスな表現が楽しめます。

登場キャラクター

本作には、個性豊かなキャラクターたちが多数登場します。

なん子: 主人公であり、作者自身。野鳥観察をこよなく愛する。
なん子の母: 登場頻度が高く、テニスが得意。
なん子の父
なん子の兄: 元小学校教諭で、現在は教育委員会の職員。
Sさん: なん子の友人。

そして、何と言っても魅力的なのは、多種多様な鳥たちです。

ヒヨドリ（ヒヨちゃん）
ツグミ（つぐみん、でぶみん）
アオゲラ（ポンちゃん）
スズメ（ハム子、ダルマ）
エナガ（サーカス毛玉）
* カラス

その他にも、猫のミーちゃんや犬のジョンなど、様々な動物が登場し、物語を彩ります。

単行本の構成

単行本は、カバー表紙に野鳥のイラストと作者名が印字され、見返し部分には登場キャラクターの紹介があります。カバー裏にはイラストが描かれ、裏見返しには作者によるレシピ「とりぱんクッキング」が掲載されています。目次はなく、雑誌掲載時のカラーページが収録されており、各巻には20話程度が収録されています。巻末には、おまけ漫画や読者からの投稿を紹介する「おたよりコーナー」が掲載されています。

多彩な試み

作者は、本編以外にも様々な試みを行っています。単行本の巻末には、絲山秋子との対談や、短編漫画、住宅展示場の見学記、漫画家諸先輩のエッセイなどが収録されています。また、サイン会参加者に配布された100コマ漫画や、東日本大震災に関するエピソードを収録するなど、読者への想いが込められています。

『とりぱん大図鑑』

関連書籍として、『とりぱん大図鑑』が刊行されています。この図鑑は、作中に登場する鳥たちをはじめとするキャラクターや、地元料理などを、写真やイラストと共に解説したものです。作者の印税は東日本大震災の被災者のために寄付されています。

『とりぱん』は、自然を愛する全ての人におすすめしたい、心温まる作品です。

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