どですかでん

映画『どですかでん』

『どですかでん』は1970年に公開された日本の映画で、名監督・黒澤明が手掛けた初のカラー作品です。この映画は、木下惠介や市川崑、小林正樹と共に結成された「四騎の会」の第1作であり、山本周五郎の小説『季節のない街』を原作として、生活の厳しい人々の日常をユーモラスかつ心に響く形で描写しています。

あらすじ

物語は、貧困に悩む郊外の街を舞台に展開します。主人公は六ちゃんという少年で、彼は学校に行かず、近所の空き地で見えない路面電車を運転して遊んでいます。彼の口から発せられる「どですかでん」という擬音語は、実は周五郎が創作したもので、物語の重要な要素となっています。六ちゃんの母親は彼の行動を心配し、精神的な問題を抱えているのではないかと悩みますが、本人は母親の方が正常ではないと確信しています。

さらに、六ちゃんの周囲には一癖も二癖もある人々が暮らしています。ヘアブラシ職人の良太郎は不倫の果てにできた子供を育てていますが、その子供たちを諦めてはいません。日雇い労働者の河口と増田は夫婦交換をして楽しむ中、陰気な平さんの元にはかつての恋人が訪れ、かつての出来事が暗影を残しています。廃車に住む乞食の親子も、夢を語り合いますが、厳しい現実が彼らを襲います。

そんな中でも、六ちゃんは元気に「電車ごっこ」をして遊び、日常は静かに過ぎていきます。

キャスト

本作には多くの個性的なキャラクターが登場し、彼らを演じるのは名優たちです。六ちゃん役の頭師佳孝をはじめ、菅井きん、三波伸介、丹下キヨ子など多様なキャストが織りなすストーリーが魅力です。

スタッフ

映画の制作には、黒澤明自身が監督、脚本を執筆し、さらには製作も手掛けました。撮影は斎藤孝雄が担当し、音楽には武満徹が起用されるなど、日本[[映画]]界の才能が揃いました。

制作背景

1969年、黒澤は「四騎の会」を結成し、共同で映画を作ろうと試みました。しかし、意見が合わず頓挫した後、黒澤は『季節のない街』を基に映画化することを決めました。撮影は27日間で行われ、黒澤は自身の家を担保に製作費を調達するという異例の低予算での制作を実現しました。

評価

この映画は、日本国内では興行的な成功を収めることはできませんでしたが、第44回キネマ旬報ベスト・テンでは3位に選ばれ、井川比佐志は男優賞を受賞しました。また、海外では高い評価を得て、アカデミー賞外国語映画賞にノミネートされたほか、モスクワ国際[[映画祭]]やベルギー映画批評家協会賞で受賞するなど、その評価は国内外で広がりました。

映画『どですかでん』は、ユーモアと深い人間ドラマが交差する作品で、貧困層の人々の苦悩と喜びを豊かに描き出しています。

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