なだ万

なだ万：伝統と革新を紡ぐ老舗日本料理店

株式会社なだ万は、1830年（天保元年）に創業した、日本を代表する老舗日本料理店の一つです。客単価1万5千円程度の高級店として知られ、その歴史と格式は、多くの人々に愛されています。料亭としての顔だけでなく、百貨店などでのお惣菜や弁当の販売も行っており、より身近な存在としても親しまれています。

歴史：長崎から大阪、そして世界へ

なだ万の創始者である灘屋萬助は、長崎出身。卓袱料理と漢方の知識を活かし、長崎料理を大阪風にアレンジした料理屋を大阪で開いたのが始まりです。1871年には、大阪北浜に「灘萬楼」を開業。明治中期には、現代のスーパーマーケットの先駆けとも言える総合食料品店を開き、当時珍しかったパンを販売するなど、革新的な取り組みも行いました。

料亭としての評判は高く、政財界の要人や文豪など、多くの著名人が訪れました。その様子は、彼らの作品にも登場しています。大正時代には、パリ講和会議の際に西園寺公望の訪欧に随行する料理人として、なだ万の店主が指名されるなど、その料理の腕は国際的にも評価されました。また、洋式ホテルの経営にも関わり、レストランでのジャズ演奏は「灘萬ジャズ」として親しまれました。

戦後は、帝国ホテルをはじめとする名だたるホテルに日本料理店を出店し、特にホテルニューオータニ庭園にある「山茶花荘」は、政府要人らの会談場所として頻繁に利用されました。1986年の東京サミットでは、公式晩餐会の会場にも選ばれるなど、日本の外交の舞台においても重要な役割を果たしました。

しかし、平成に入ると、バブル崩壊やリーマン・ショックの影響で高級日本料理店の客足は遠のき、その売上不振を百貨店などでの惣菜販売で補うようになりました。2014年には、アサヒビールが創業家から株式の過半数を取得し、なだ万はアサヒグループの連結子会社となりました。この買収により、安定した経営基盤を得ましたが、2023年にはアサヒグループが外食事業からの撤退を決定し、なだ万も売却される方針となりました。その後、アサヒグループ内に所属している状況を経て、2024年9月1日には、ONODERA GROUPへの全株式売却が発表されました。

店舗展開：国内外への広がり

2024年1月時点で、なだ万の日本料理店は、日本国内では関東圏を中心に25店舗、海外では中国などに4店舗を展開しています。また、惣菜販売店や弁当販売店としては、43店舗を展開しており、より多くの人々にその味を届けています。

沿革：歴史を彩る出来事

1830年（天保元年） - 初代・灘屋萬助が大阪で料理屋を創業。
1871年（明治4年） - 長崎料理を基調とした大阪料理の店「灘萬楼」を開業。
1919年（大正8年） - 西園寺公望の訪欧に三代目・楠本萬助が随行。
1951年（昭和26年） - 株式会社に改組。
1970年（昭和45年） - 帝国ホテルに日本料理店を開店。
1973年（昭和48年） - ロイヤルホテルに日本料理店を開店。
1974年（昭和49年） - 本社を大阪から東京のホテルニューオータニ内に移転。
1981年（昭和56年） - 香港のシャングリ・ラ・ホテルに海外1号店を開店。
1986年（昭和61年） - 東京サミットを山茶花荘で開催。
2005年（平成17年） - 愛・地球博長久手会場に出店。
2011年（平成23年） - 『なだ万日本料理の真髄』（幻冬舎メディアコンサルティング）を発売。
2014年（平成26年） - アサヒビール株式会社が創業家より株式51.1%を取得、傘下入りに合意。
2015年（平成27年） - 谷田部二郎 代表取締役会長に就任
2016年（平成28年） - アサヒグループの100%グループ会社となる
2017年（平成29年） - 野原優 代表取締役社長に就任
2020年（令和2年） - 巻木通浩 代表取締役社長に就任
2023年（令和5年） - 大貫一敏 代表取締役社長に就任
2024年（令和6年） - 本企業の株式をONODERA GROUPに売却。同社傘下に入り、本社を大手町へと移した。小野寺裕司 代表取締役社長に就任

関連項目

楠本憲吉
中村孝明
神田川俊郎
アサヒビール
ハインリヒ・フロインドリーブ

外部リンク

なだ万

なだ万は、長い歴史の中で、常に変化を恐れず、革新的な取り組みを続けてきました。伝統の味を守りながら、新しい食の可能性を追求する姿勢は、これからも多くの人々に感動を与え続けるでしょう。

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