なまこ池

甑四湖：上甑島の貴重な汽水湖群

上甑島北東部の海岸線に位置するなまこ池、貝池、鍬崎池、須口池の4つの湖沼は、総称して甑四湖と呼ばれています。これらの湖は、数千年前の縄文海進期に、海岸線の浸食と砂州の形成によって誕生した海跡湖です。複雑に入り組んだ海岸線が、波による侵食と、海流によって運ばれた礫の堆積によって次第に閉ざされ、現在の姿になったと考えられています。特に、なまこ池を東シナ海から隔てる長さ約2キロ[[メートル]]の砂州は、丸い小石が積み重なって形成されており、独特の景観を呈しています。

各湖沼の特徴

なまこ池

面積0.52平方キロ[[メートル]]、最大水深22メートルを誇るなまこ池は、最大の汽水湖です。砂州の隙間から海水が出入りするため、潮の満ち引きに呼応して水位が変化しますが、その変化幅は最大23センチメートルと、日本の他の汽水湖に比べて非常に小さいのが特徴です。薩摩藩時代に導入されたとされるなまこ（海鼠）の繁殖地としても知られており、現在もその名が池の名前に残っています。湖岸にはアコヤガイが密生し、ボラ、キス、シマイサキなど多様な魚介類が生息する豊かな生態系を形成しています。

貝池

面積0.16平方キロ[[メートル]]、最大水深11メートルの貝池は、なまこ池と細い水路で繋がっています。しかし、貝池の水位は、なまこ池よりも高いことが多く、通常は貝池からなまこ池へと水が流出しています。貝池の大きな特徴は、水深約5メートルを境に、上部と下部で塩分濃度が大きく異なる部分循環湖であることです。上部は雨水の影響で低塩分、下部は海水が停滞して高塩分となっています。下部の高塩分水域には多量の硫化水素が含まれ、特殊な微生物しか生息できません。一方、上部と下部の境目には、クロマチウムという光合成硫黄細菌が濃密に分布し、20センチメートルの厚さの赤紫色の帯を形成しています。この現象は、バルト海沿岸の湖沼と貝池でしか確認されていません。

鍬崎池（くわざきいけ/かざきいけ）

面積0.14平方キロ[[メートル]]、最大水深5.9メートルの鍬崎池は、なまこ池、貝池とは独立した湖です。塩分濃度は5～9パーミルと低く、ほぼ淡水湖と言えるでしょう。

須口池

須口池は、塩分濃度が33.3パーミルと、他の湖沼に比べて高く、海水の直接的な影響を受けていることがわかります。

歴史と景観

これらの湖沼は、かつて入り組んだ海岸線の一部でしたが、縄文海進期に形成された砂州によって東シナ海から隔てられました。現在の長目の浜と呼ばれる砂州は、かつては海面下にあり、その後海面が低下することによって地上に現れたものです。薩摩藩2代藩主・島津光久が、この浜の景観を「眺めの浜」と称賛したことが、長目の浜の名称の由来となっています。

甑四湖の保全

甑四湖は、独特の地形と生態系を持つ貴重な自然環境です。それぞれの湖沼が異なる環境特性を持つことで、多様な生物が生息しており、その保全が重要な課題となっています。今後、これらの湖沼の生態系の維持・保全に向けた取り組みが、ますます重要になってくるでしょう。

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