ばら (ゴッホの絵画)

「ばら」は、フィンセント・ファン・ゴッホが1889年4月に描いた油彩画です。この作品は、ゴッホが南フランスのアルルから精神療養のためサン＝レミ＝ド＝プロヴァンスに移る直前に制作されたと考えられています。

ゴッホはアルル時代に鮮やかな色彩と大胆な筆致による独自の画風を確立しましたが、「ばら」には、サン＝レミ時代に顕著になる「うねるようなタッチ」が表れ始めている点が特徴です。花びらや葉の輪郭線が滑らかに波打ち、動きや生命感が感じられます。色彩もアルル時代の鮮やかさとは異なり、落ち着いた色調に変化しているのが見て取れます。

この作品は、かつて松方コレクションに含まれていました。松方コレクションは、実業家の松方幸次郎が収集した美術品コレクションで、第二次世界大戦後に日本に返還されました。現在は、国立西洋美術館の所蔵品として一般公開されており、多くの美術愛好家や研究者によって鑑賞されています。

「ばら」は、ゴッホの画風の変遷をたどる上で重要な作品の一つであり、彼の内面的な変化を映し出しているとも言えるでしょう。アルル時代の情熱的な色彩や筆致から、サン＝レミ時代にみられる、より内省的で繊細な表現へと移行していく過程が、この作品にはっきりと表れています。ゴッホの作品を理解する上で欠かせない作品です。

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