ひこうき雲 (荒井由実のアルバム)

荒井由実『ひこうき雲』：時代を彩るデビューアルバム

『ひこうき雲』は、荒井由実（現：松任谷由実）が1973年11月20日にリリースした初のオリジナルアルバムです。東芝EMIから発売されたこのアルバムは、彼女の音楽キャリアの幕開けを告げる重要な作品となりました。

アルバムの特徴

本作には、デビューシングル「返事はいらない」や、後に彼女の名を広く知らしめることとなる「きっと言える」、そしてアルバムタイトルにもなっている「ひこうき雲」が収録されています。当時フォークソングが主流だった音楽シーンにおいて、プロコル・ハルムやミッシェル・ポルナレフからの影響を受けた荒井由実の楽曲は、その斬新さで大きな話題を呼びました。

特に「ひこうき雲」は、クラシックとポップスの融合というテーマに対する彼女なりの解釈が反映された楽曲であり、プロコル・ハルムからの影響が色濃く表れています。

豪華なバックミュージシャン

レコーディングには、後にティン・パン・アレーとして名を馳せるキャラメル・ママが参加。キーボードの松任谷正隆（後に彼女の夫となる）をはじめ、細野晴臣（ベース）、鈴木茂（ギター）、林立夫（ドラム）といった、日本の音楽シーンを代表するミュージシャンたちが名を連ねています。

プロデューサーの有賀恒夫によれば、当初は荒井由実の歌唱がバックバンドの演奏に追いつかない部分もあり、完成までには1年以上の時間を要したとのことです。

ジャケットデザインとエピソード

ジャケットデザインは、教会音楽レーベル『アルヒーフ』のデザインを模倣したものと言われています。ユーミンの意向が反映されたデザインですが、ALFAのロゴを東芝のディレクター名に変更させられたというエピソードも残されています。この経験が、彼女が自身のレコード会社設立を志すきっかけになったとされています。

ブックレットには、ユーミン自身が手がけたイラストと、少女から大人への変化を綴った詩「誕生日」が収録されています。

収録曲について

アルバムには多彩な楽曲が収録されています。

ひこうき雲：2枚目のシングルB面曲。1989年発売の8cmシングルに別ミックスバージョンが収録されています。
曇り空：松任谷正隆がバックコーラスを担当。ギターは川添象郎の所有する高価なフラメンコギターが使用されました。
恋のスーパー・パラシューター：ジミ・ヘンドリックスが兵役でパラシュート部隊にいたことにヒントを得た楽曲です。
空と海の輝きに向けて：デビューシングルのB面曲で、アルバムバージョンとして別テイクで収録されています。
きっと言える：2枚目のシングル。転調を繰り返す特徴的な楽曲です。
ベルベット・イースター：7枚目のシングル『翳りゆく部屋』のB面としてシングルカットもされました。
紙ヒコーキ：アサヒ飲料「旨茶」のCMソングや、テレビ東京系『有吉ぃぃeeeee!そうだ!今からお前んチでゲームしない?』のエンディングテーマにも起用されました。
雨の街を：ユーミン自身が「私の一番好きな曲です」と語る楽曲。TBS系ドラマ『ルージュの伝言』でドラマ化もされました。
返事はいらない：デビューシングル。アレンジを変えて収録されています。
そのまま：ユーミンが中学生の頃に友人が書いた英語の歌詞に曲をつけたものの、歌詞の解釈の違いから没になったというエピソードを持つ楽曲です。
* ひこうき雲 (short version)：デモテープの音源が短く収録されています。

40周年記念盤

2013年には、表題曲「ひこうき雲」がスタジオジブリ映画『風立ちぬ』の主題歌に起用されたこと、そしてオリジナル盤発売から40周年を迎えたことを記念した企画盤が発売されました。CD+DVD、CD+DVD+LPの2形態で、宮崎駿の絵によるLPサイズの絵本仕様となっています。

DVDには、砂田麻美が監督を務めた「ひこうき雲」のミュージッククリップや、松任谷由実のアディショナル・ボーカルが追加されたリミックスバージョンが収録されています。

まとめ

『ひこうき雲』は、荒井由実の原点であり、日本の音楽史に残る名盤です。彼女の音楽的な才能と、当時の音楽シーンの革新的な空気を感じ取ることができるでしょう。40周年記念盤は、オリジナル盤の魅力をさらに深掘りする内容となっており、ファン必携のアイテムと言えます。

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