ひので (人工衛星)

科学衛星ひので（SOLAR-B）について

日本独自の太陽観測衛星「ひので（SOLAR-B）」は、国立天文台（NAOJ）と宇宙航空研究開発機構（JAXA/ISAS）が共同で、アメリカのNASAやイギリスのPPARCとの国際協力のもとで開発されました。本衛星は先代の「ようこう」衛星の成果を踏まえ、太陽の活動や磁場との関連、さらにはコロナの加熱問題や太陽フレアの発生に関する詳細な探求を行うことを目的としています。

主な目的

ひのでの設計にあたっては、太陽フレアなどの宇宙現象を理解し、これらの現象が地球に与える影響を把握することが重視されています。これにより、宇宙天気予報のための基礎情報を提供し、宇宙環境におけるリスクを軽減することが期待されています。特に、フレアによって放出される宇宙プラズマは、地球の磁気圏と相互作用し、人工衛星の障害や宇宙飛行士の健康問題、無線通信の途絶など、実際にさまざまな影響を及ぼす可能性があります。

観測装置

1. 可視光磁場望遠鏡（SOT）

SOTは、太陽の表面を可視光で観測し、偏光データを解析することで局所的な磁場ベクトルの理解を深めるために開発されました。直径50cmの口径を持ち、0.2〜0.3秒角という高い空間分解能を備えています。この望遠鏡は日本の国立天文台が設計し、NASAのロッキード・マーティン太陽天体物理学研究所が検出器を担当しています。

2. 極紫外線撮像分光装置（EIS）

EISは、波長17-21nmと25-29nmの範囲で高解像度画像を取得し、太陽の表面からコロナに至るエネルギーの移動を監視するために設計されています。特に、遷移層と呼ばれる領域の観測が特徴的で、SOTとXRTのデータを橋渡しする役割を果たします。日本、アメリカ、イギリス、ノルウェーの連携により開発されたこの装置は、「SOHO」と同様の機能を持ちながら、性能が向上しています。

3. X線望遠鏡（XRT）

XRTは、高温コロナを観測するための主要な機器で、0.2-20nmの範囲で温度100万℃から1000万℃以上を観測可能です。この装置は、過去の衛星では観測できなかった高温領域を捉えることができ、非常に高い空間分解能（1秒角）を誇ります。観測データは国立天文台とJAXAによって開発された検出器を用いて収集されます。

計画の推移

ひのでは、2006年9月22日に打ち上げられ、その後、初期軌道から太陽同期軌道へ移行しました。最初の観測機器が稼働開始したのは、打ち上げから数週間後の10月であり、順調に観測データの取得が進められました。特に、2007年には全観測データが公開され、多くの重要な発見や研究成果が生まれました。その中には、太陽風の加速メカニズムやコロナ加熱の謎に挑むための新しい仮説も含まれており、科学界でも大きな関心を集めています。

戦略的な宇宙観測の一環として、ひのでは太陽の秘密を解き明かす重要な役割を果たし続けており、今後の研究にも多大な貢献が期待されています。

もう一度検索