ひりゆう型消防船 (初代)

ひりゆう型消防船について

ひりゆう型消防船（ひりゆうがたしょうぼうせん）は、日本の海上保安庁に所属する消防艇であり、主に大型タンカーの火災に対応するために設計されています。1960年代における日本の原油輸入量の増加と、それに伴う石油タンカーの海難事故の頻発が背景にあります。特に1962年と1965年には、京浜運河や室蘭製油所で発生した大規模な衝突事故が深刻な問題となり、これらの事故を契機に本型消防船の必要性が高まりました。

開発の経緯

日本国内における化学消火能力を有する消防艇は非常に限られており、当時在籍していた小型艇は大型タンカーの火災に対応できるものではありませんでした。このような状況を受けて、海上保安庁は1965年に化学消防艇設計会議を設置し、双胴船型が最適であるとの結論を得ました。その後、1968年には1番船が発注され、1969年3月に竣工しました。これがひりゆう型消防船の始まりです。

設計と特徴

ひりゆう型の設計は特に火災現場での安定性に重点が置かれています。双胴船型は放水時の操縦性が良好であり、また、13.5ノットという速力も実現されています。船体には主にNK-A級鋼材が用いられ、強度と軽量化が図られています。特に放水櫓は水面からの高さを15メートルに設定し、風圧や揺れに対する耐久性も考慮されています。

この消防船は、火災現場への接近時に自らが火元となることを避けるために、様々な安全装置が装備されています。与圧装置や電気機器の防爆構造、さらには難燃材料の使用もその一環です。

主要システム

ひりゆう型消防船は、主要な動力としてメルセデス・ベンツ製のV型12気筒ディーゼルエンジンを搭載しています。このエンジンの出力を利用して、各種のポンプも駆動されます。特に消防ポンプや原液ポンプの動力を主機に依存する形が取られており、機動力と放水能力の両立が求められます。

消防装備

消火に際して、ひりゆう型消防船は様々な消防装置を備えています。最大で40メートルの射程を持つ泡用放水銃や、6,000リットル毎分の放水能力を誇る海水専用放水銃が設置されています。これに加え、火点に接近するために必要な消火用の泡原液も豊富に搭載されています。このように、ミニマムな距離で強力な消火活動が可能になっています。

運用の歴史

1番船「ひりゆう」は竣工直後に横浜に配備され、その後も3隻が続いて建造されました。1974年には大規模な海難事故での消火活動が行われ、ひりゆう型消防船の設計が有効であることを証明しました。その後も、海上保安庁はさらなる消防力の強化に取り組み、本型の続艦を建造するなどして、網羅的な対応能力を確保しています。

しかし、1997年には新ひりゆう型消防船が建造され、旧型船は老朽化のため退役が進められました。早くからの計画により、新しい船舶へと更新が続けられている反面、長期間にわたり第一線で活躍したひりゆう型消防船の功績は高く評価されています。

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