びっくり館の殺人

びっくり館の殺人：少年の記憶と密室の謎

綾辻行人による人気推理小説シリーズ『館シリーズ』の第8作、『びっくり館の殺人』は、2006年3月に講談社より刊行されました。その後、講談社ノベルス、講談社文庫からも出版され、多くの読者に愛されています。本作は、シリーズの中でも独特の雰囲気を持つ作品として知られています。

物語は、主人公である小学6年生の永沢三知也の視点から語られます。彼は、夏休みのある日、不思議な雰囲気の屋敷「びっくり館」で、同い年の少年、俊生と出会います。その出会いをきっかけに、三知也は「びっくり館」にまつわる様々な出来事、そして、クリスマスの夜に発生する不可解な密室殺人事件へと巻き込まれていきます。

「びっくり館」は、三知也少年にとって特別な場所です。しかし、その館には、怪奇現象や不穏な噂がつきまとっています。風変わりな人形や、謎めいた「七色のびっくり箱」、そして、悪魔の子と呼ばれる存在など、館の内部には不気味な謎が潜んでいます。これらの謎が、事件の真相へと繋がっていくのです。

物語には、三知也とその兄、父、そして「びっくり館」の住人である古屋敷家の人々が登場します。老主人である古屋敷龍平、彼の養女である美音、娘の梨里香、そして事件の中心となる俊生とその兄。さらに、家庭教師の新名努や、三知也の同級生である湖山あおいといった人物も物語を彩ります。

これらの登場人物たちは、それぞれに秘密を抱え、複雑な人間関係を築いています。その関係性が、事件の真相解明に大きく影響を与えます。そして、物語の背後には、謎めいた建築家である中村青司と、推理作家である鹿谷門実という二つの影が潜んでいます。彼らの存在が、物語全体にさらなる謎と緊張感を与えます。

『びっくり館の殺人』は、単なる密室殺人の物語ではありません。少年の視点を通して描かれる、記憶と現実の曖昧な境界、そして、過去と現在が交錯する複雑な心理描写が大きな魅力となっています。綾辻行人特有の緻密な構成と、読者を驚かせる意外な展開は、最後まで目が離せません。

この作品は、館シリーズの中でも異彩を放つ、独特の雰囲気と謎解きの面白さを兼ね備えています。綾辻行人作品の中でも特に印象深い作品の一つであり、多くの読者を魅了し続けている理由が、この作品を読めばよく分かります。

主な登場人物

永沢三知也：物語の語り手。小学6年生。
永沢十志雄：三知也の兄。
永沢比出彦：三知也の父。
古屋敷龍平：「びっくり館」の老主人。
古屋敷美音：龍平の養女。
古屋敷梨里香：龍平の娘。
古屋敷俊生：龍平の弟。事件の中心人物。
関谷：古屋敷家のお手伝い。
新名努：大学生の家庭教師。
湖山あおい：新名のいとこ。三知也の同級生。
中村青司：謎の建築家。
鹿谷門実：謎の推理作家。

書籍情報

講談社〈ミステリーランド〉 2006年3月17日 ISBN 4-06-270579-6
講談社ノベルス 2008年11月6日 ISBN 978-4-06-182623-6
* 講談社文庫 2010年8月12日 ISBN 978-4-06-276717-0

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