びん細工手まり

びん細工手まり：愛荘町に息づく、優美なガラス工芸

びん細工手まりは、滋賀県愛知郡愛荘町（旧愛知川町）に伝わる、繊細で美しい伝承工芸品です。小さなガラス瓶の中に、瓶の口よりも大きな手まりが納められており、その技術と美しさは見る人々を魅了します。

縁起物としての意味合い

丸いガラス瓶の中に丸い手まりが収まっている様子から、「丸く仲良く」という願いが込められ、縁起物として床の間や玄関に飾られてきました。かつては嫁入り道具の一つとして、手作りのびん手まりを持参する風習もあったそうです。

江戸時代末期にルーツ

びん細工手まりの歴史は、江戸時代の終わりに遡ります。愛荘町長野に嫁いだ市橋つねが持参したびん細工手まりが、この地に伝わる最古のものと考えられています。つねは近江商人の妹でしたが、現在、多賀町にはびん細工手まりの技術は伝わっていません。

明治時代には、勝光寺や信光寺で行われていた裁縫教室で、びん細工手まりの製法が教えられていました。勝光寺の野田操から青木ひろへと技術が受け継がれましたが、青木は弟子を取ることなく亡くなってしまいました。

技術の保護と復活

昭和48年（1973年）、新聞記者の進言をきっかけに、愛知川町（当時）の教育委員会がびん細工手まりの保存活動に乗り出します。青木ひろの夫の協力を得て技術の復元が試みられ、町民を対象とした講習会が開かれました。その受講生たちが中心となり、「伝承芸能愛知川びん細工てまり保存会」が結成され、現在に至ります。

保存会の活動は町民に限定されていますが、町外の人々にも体験の機会を提供するため、平成10年（1998年）からは製作体験教室も開催されています。平成11年（1999年）には意匠登録もされ、その保護に力が注がれています。

びん細工手まりに触れる

愛荘町立愛知川びんてまりの館

びん細工手まりの専門展示施設です。常設展示に加え、毎年12月には新作を集めた特別展「びんてまり展」が開催されます。隣接する愛荘町立愛知川図書館とともに「ゆうがくの郷」を形成し、文化に触れることができます。

愛知川駅コミュニティハウス るーぶる愛知川

びん細工手まりの販売施設です。郷土物産展示コーナーでは、一部展示も行われています。価格帯はおおよそ19,000円から25,000円程度です。

びん細工手まりをモチーフにしたお菓子やグッズ

愛荘町では、びん細工手まりをモチーフにした様々なお菓子やグッズが販売されています。

和菓子: 町内３つの和菓子店で、それぞれ趣向を凝らしたお菓子が販売されています。
風呂敷: るーぶる愛知川では、びんてまり柄のオリジナル風呂敷が販売されています。
* 麻ハンカチ: 湖東地域の麻織物とコラボしたハンカチも人気です。びんてまりの絵柄が刺繍されています。

類似する工芸品

ガラス瓶の中に手まりを入れる工芸品は、全国各地に存在していたようです。愛知川町の調査によれば、かつては7ヶ所に伝わっており、技術は絶えたものの伝世品が残っている地域も12ヶ所あるそうです。

びん細工手まりは、単なる工芸品としてだけでなく、地域の歴史や文化を伝える貴重な存在です。愛荘町を訪れた際には、ぜひその美しさに触れてみてください。

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