手まり

手まり：日本の伝統的な美と遊び

手まりは、古くから日本に伝わる伝統的な玩具であり、美しい装飾が施された工芸品としても知られています。その起源は、糸を丸めただけのシンプルなものでしたが、時代とともに変化し、現在のような精巧な手まりへと発展しました。ここでは、手まりの歴史、種類、そして現代における手まりの役割について詳しく解説します。

手まりの歴史

手まりの原型は、糸を芯に巻いたシンプルなものでした。それが16世紀末頃になると、ぜんまい綿などを芯にして弾力性を持たせ、美しい糸で幾何学模様を施す現在の形へと進化しました。大きさはソフトボールよりやや大きく、ハンドボールよりやや小さいものが一般的です。江戸時代中期以降には、特に正月の遊びとして広く親しまれました。

手まりと蹴鞠

日本には「まり」と呼ばれるものが二つ存在します。一つは鹿の皮を縫い合わせた蹴鞠で、主に貴族の男子が楽しむスポーツまたは神事として行われました。もう一つが手まりで、こちらは主に女児の遊びとして親しまれましたが、江戸時代には男児も一緒に楽しむことがありました。良寛のような禅僧も、子供たちと手まりで遊んだという記録が残っています。

ゴムまりの登場

明治時代中期になると、安価なゴムまりが登場し、手まりの遊び方も変化しました。ゴムまりは弾力性に優れており、手でついたり、空中に打ち上げたりして遊ぶことができました。夏目漱石の小説『それから』にも「護謨毬」という言葉が登場しており、当時のゴムまりの人気を伺い知ることができます。ゴムまりの普及とともに、まりつきは女児の遊びとしてますます人気を博し、多く手まり歌が作られました。

工芸品としての手まり

近年では、手まりはおもちゃとして遊ばれる機会は減少し、伝統工芸品としての価値が高まっています。美しい幾何学模様や繊細な手仕事は、装飾品として人々に愛されています。

各地の伝統的手まり

日本各地には、その土地ならではの特色を持つ手まりが伝わっています。

南部姫鞠（青森県八戸市）
本荘ごてんまり（秋田県由利本荘市）
御殿まり（山形県鶴岡市）
栃尾手まり（新潟県長岡市栃尾）
野州てんまり（栃木県宇都宮市）
須坂の手まり（長野県須坂市）
松本てまり（長野県松本市）
加賀てまり（石川県金沢市）
小松の口かがり糸まり（静岡県浜松市）
紀州てまり（和歌山県和歌山市・田辺市など）
松山姫てまり（愛媛県松山市）
博多てまり（福岡県福岡市）
肥後てまり（熊本県熊本市）
琉球手まり

これらの手まりは、それぞれの地域の歴史や文化を反映した独特の模様や技法で作られています。

琉球手まり（マーイ）

沖縄県には、ウチナーグチで「マーイ」と呼ばれる琉球手まりが伝わっています。紅型や琉球舞踊を模した独特の文様が特徴で、女児が13歳になると祖母や母親が手作りの手まりを贈る「十三マーイ」という風習がありました。

手まりは、日本の美しい伝統文化の一つです。その繊細な美しさと、時代を超えて受け継がれてきた技術は、これからも大切にされていくことでしょう。

関連情報：手鞠歌、御殿まり、柳川まり、はれてまり工房

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