ふじ (リンゴ)

リンゴの王様「ふじ」：その魅力と歴史

「ふじ」は、日本が誇るリンゴの代表的な品種であり、その生産量は日本国内だけでなく、世界でもトップクラスです。この記事では、「ふじ」がどのようにして誕生し、どのような特徴を持ち、世界中で愛されるようになったのかを詳しく解説します。

誕生の背景

「ふじ」は、1939年に農林省園芸試験場（現在の農研機構果樹研究所）で、「国光」と「レッドデリシャス」という2つの品種を交配して生まれました。品種登録されたのは1962年です。その名前は、育成地の青森県藤崎町、日本の象徴である富士山、そして当時の人気女優、山本富士子に由来すると言われています。

「ふじ」の特徴

「ふじ」の果実は、甘さと酸味のバランスが絶妙で、シャキシャキとした食感が特徴です。果汁も豊富で、一口食べると口の中に甘みが広がります。また、貯蔵性が非常に高く、長期間鮮度を保つことができるため、一年を通して楽しむことができます。

栽培方法の違い

「ふじ」には、栽培方法によって「ふじ」と「サンふじ」の2種類があります。「ふじ」は、収穫前に袋をかけて栽培することで、果皮が鮮やかな赤色になります。一方、「サンふじ」は、袋をかけずに太陽の光をたっぷり浴びて育てるため、糖度が高く、蜜が入りやすいのが特徴です。近年では、葉摘みをせず、より多くの光合成産物を果実に蓄積させる「葉とらずサンふじ」という栽培方法も行われています。

味の特徴

「ふじ」の果実は、円形からやや長円形で、重さは300グラムほどです。果肉は黄白色で硬く、シャキシャキとした食感が楽しめます。糖度は14〜16%、酸度は0.3〜0.5%で、甘味と酸味のバランスが絶妙です。成熟すると蜜が入りやすく、貯蔵性にも優れています。

生産量

「ふじ」は、日本国内で最も多く生産されているリンゴの品種であり、2023年にはリンゴ全体の約51%を占めています。主な産地は、青森県、長野県、山形県、岩手県、福島県、秋田県です。

世界でも、「ふじ」は広く栽培されており、特に中国での生産量が非常に多いです。世界のリンゴ生産量の約半分を中国が占めており、そのうちの約70%が「ふじ」であると推定されています。そのため、「ふじ」は世界で最も生産量が多いリンゴ品種となっています。

アメリカ合衆国でも、「ふじ」は1980年代から栽培されており、大きな需要を得ています。ヨーロッパでも生産されています。

歴史

「ふじ」は、1939年に青森県で交配され、1962年に品種登録されました。当初は、リンゴの主要品種は「国光」や「紅玉」でしたが、1963年のリンゴ価格暴落をきっかけに品種更新が進み、1981年には「ふじ」が日本で最も生産量の多い品種となりました。

その優れた品質から、「ふじ」は日本だけでなく世界中で愛されるようになり、2014年には「戦後日本のイノベーション100選」にも選出されました。

原木と名称の由来

「ふじ」の原木は、青森県藤崎町から岩手県盛岡市に移されました。リンゴの品種は種子で増やすことができないため、「ふじ」の木はすべてこの原木のクローンです。原木は高齢のため、保護されています。

「ふじ」の名前は、育成地の藤崎町、富士山、そして女優の山本富士子に由来するとされています。

派生品種

「ふじ」には、枝変わりによって生まれた多くの派生品種があります。これらの品種は、成熟時期や着色性、果実の形状などが異なり、さまざまなニーズに対応しています。早生ふじ、着色性の良いふじ、黄色系のふじなどがあります。

また、「ふじ」を交配親とする新品種の開発も盛んに行われています。これらの品種は、「ふじ」の優れた特性を受け継ぎながら、新たな風味や食感を生み出しています。

「ふじ」は、その美味しさ、貯蔵性、そして多様な派生品種によって、これからも世界中の人々に愛され続けるでしょう。

もう一度検索