ふじ (砕氷艦)

JMSDF AGB FUJI級について

ふじは、日本の文部省が運営する2代目の南極観測船で、海上自衛隊の艦番号AGB-5001を持つ砕氷艦です。この艦は1965年に進水し、同年の7月に竣工しました。南極観測船としては初めて本格的な砕氷性能を有し、さらに日本の自衛艦としては初めてヘリコプターを搭載した艦でもあります。

艦の概要

南極観測船「ふじ」の艦名は、日本の象徴的な山富士山に由来しています。過去に「富士」と名付けられた艦艇には、大日本帝国海軍のスループや戦艦があります。この艦は、一般的な船舶と比べて幅が広く設計されており、連続で砕氷する能力は80〜120cmの厚さの氷を対象とし、最大で6mの氷を砕くことができます。

「ふじ」には、貨物の積み下ろしのために艦の前と後にそれぞれ2基ずつのクレーンが装備されています。また、後部にはヘリコプター格納庫と発着甲板が設けられ、偵察及び輸送用にS-61A-1を2機、氷状調査用にベル47G2Aを1機搭載しています。この多機能なデザインにより、観測や輸送、砕氷といった幅広い任務に対応できました。

設計プロセス

1962年、日本の防衛庁が文部省から南極観測に関連する新艦の設計要請を受けてから始まりました。これまで砕氷艦を建造した経験がない日本であり、設計のためにアメリカ海軍の砕氷艦「グレーシャー号」を参考にしました。1963年の閣議において、南極観測の再開とその輸送を防衛庁が担当する決定がなされ、さらなる設計作業が進められました。

新船舶設計委員会が設立され、南極観測に必要な技術の研究が行われました。専門家たちの意見を集約しながら、「ふじ」は多目的な砕氷艦として設計されました。特に航空輸送機能は、昭和基地から40マイル離れた地点から物資を運ぶことが可能で、迅速かつ効率的な物資輸送を実現しました。

普及と運用

「ふじ」は、1965年から1983年にかけて南極観測隊のサポートを行います。運用期間中の行動日数は2869日、輸送人員は800名にのぼり、7529.5トンの物資を運びました。この艦は、昭和基地への接岸を数度成功させており、その間に数々の困難にも直面しました。例えば、1970年には南極海でプロペラが折れ、アメリカとソ連に救援を要請するという緊急事態に陥ったこともありましたが、その後、自力で脱出に成功しました。

退役後の「ふじ」

「ふじ」は1984年に退役し、その後は名古屋港に係留され、観光のために一般公開されています。艦内には食堂や居室、診療所などがリアルに再現されており、訪問者は南極観測船としての歴史を体験することができます。また、ふじが描かれた記念切手やスタンプも発行され、広くその存在が記憶されています。

「ふじ」は、先代の宗谷よりも大きなサイズで、より高い砕氷性能を持ちましたが、任務の遂行にあたって数々の困難にも直面してきました。しかし、各観測隊をサポートしつつ様々な課題を克服し、「ふじ」の名は日本の南極観測史に刻まれています。

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