ふたなり (落語)

演目『ふたなり』の魅力

概要

『ふたなり』は古典落語の人気演目で、他に「書置違い」や「亀右衛門」といった別題もあります。この演目では、半陰陽や両性具有という意味が込められた「ふたなり」という言葉が重要な役割を果たしています。上方落語と江戸落語の両方で演じられ、各地域によって地名が異なるものの、物語の本筋は共通しています。

上方落語を代表する演者としては、三代目桂米朝や四代目桂文紅が挙げられます。彼らによる語り口や演技は、観客に一層の興味と笑いを与え、落語の伝統を受け継いでいます。

あらすじ

物語の舞台は村で、主人公は亀右衛門という親分肌の男です。ある晩、若い衆からの頼みで、なんと10両という大金を即座に工面すると約束します。亀右衛門は「隣村の金貸しから借りてくる」と豪語しますが、そのためには昼でも化け物が出ると噂されている、恐ろしい森を夜に通らねばなりません。

亀右衛門は臆病な性格でありつつも、勇気を振り絞り、森に入っていきます。その道中、彼は泣いている若い女の姿を見つけます。この女性は奉公先で男性に騙されて身重になったため、自殺を意図して森に来たと告白します。遺書まで用意していた彼女は、あとは弔ってくれる人を待っているとのこと。

亀右衛門は内心では面倒に巻き込まれることを避けたいと思っていました。しかし、彼女が礼金として10両を持っていることを知ると、考えが一変し、自殺を思いとどまらせることを決心します。女はどうやって自殺すればよいか悩んでおり、亀右衛門は首吊りの手本を見せようとしますが、なんと彼自身がそのまま首を吊り、命を落としてしまいます。彼の死に顔を見た女は、自殺の気力を失い、自らの遺書を亀右衛門の懐に届けてその場を去ります。

翌日、亀右衛門の遺体が発見され、役人が現場を調査します。役人に呼ばれた亀右衛門の息子は、彼が金策のため夜中に出かけた経緯を説明します。当初は金を借りるために失敗し自殺したと疑われていました。しかし、亀右衛門の懐から発見された遺書には「お腹に子を宿したため」との記述があり、事態は大混乱に陥ります。役人は「亀右衛門はふたなりであったのか？」と質問し、息子はその尋ねに対して「いえ、昨晩着たなりでございます」と返します。

サゲ

上方落語の一つのバリエーションでは、亀右衛門が「ふたなりか」と問われると「夜前食たなりです」と答える趣向があります。一方、江戸落語では亀右衛門の職業を猟師に設定し、役人の質問に対して「いえ、猟師でございます」と返す形でも演じられます。

このように、演目『ふたなり』は笑いの要素と深い人間ドラマが凝縮された作品であり、各演者が異なる解釈を持って語ることで、落語の特性を強調しています。

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