ふみ子の海

『ふみ子の海』

『ふみ子の海』は、市川信夫による1989年に発表された小説を原作とし、2007年に映画化された作品です。この物語は、新潟県立高田盲学校での視覚障害者教育に捧げた粟津キヨの人生を題材にし、特に彼女の少女時代を描いています。読者や観客に感動を与え、1991年には第33回児童福祉文化賞グランプリを受賞しました。

小説と映画の概要

小説『ふみ子の海』は、昭和初期の新潟を背景にしています。主人公のふみ子は、財政的に困難な家庭環境の中で盲目になり、母親のチヨと共に生きる姿が描かれます。母は娘の目の見えない悲しみと、彼女の未来への希望をどうにか保持しようと苦闘します。チヨは、ある日日本海に行き、波の音を聞かせることで娘の心に美しさを感じさせます。その瞬間、ふみ子の「海って、きれいだね」という言葉が、母の自殺念慮を食い止めるきっかけになります。

物語は、ふみ子が盲学校の教師である高野りんと出会う場面に続きます。彼女は点字を知り、盲学校への進学を希望しますが、家庭の事情からその道を断念せざるを得ません。しかし、彼女は按摩屋の師匠である笹山タカのもとで修行を始め、様々な試練を乗り越えながら成長していく姿が描かれます。さらには、高野りんとの再会がふみ子の運命を大きく変えることとなります。

映画製作の背景

映画は2006年3月に製作が開始され、新潟県上越市、柏崎市、長岡市などをロケ地に選び、撮影が行われました。この映画の特異な点は、新潟県の各市の行政トップが積極的に上映を推進したことです。泉田裕彦新潟県知事や各市長が名を連ね、作品が地域の文化として広がることを後押ししました。また、厚生労働省と文部科学省からの推薦も得て、年齢を問わず多くの観客に観てもらえることを目指しました。

2007年には全国公開に先駆けて先行上映が行われ、その後新潟県中越沖地震の影響があったものの、多くの人々からの「映画の意義を感じて上映を続けるべき」という声が上がり、県内各地での上映が継続しました。また、映画の収益の一部は新潟県の地震被災地復興に寄付されるという取り組みも行われました。

キャスト

映画には、鈴木理子が淡路ふみ子を演じ、藤谷美紀が母・チヨを演じたほか、多くの才能ある俳優たちが集まりました。友情出演としてあおい輝彦や中村敦夫なども名を連ねています。キャストの力強い演技が、物語の深みを一層引き立てています。

結び

『ふみ子の海』は、単なるエンターテイメントを超えて、視覚障害者とその周囲の人々が直面する現実を描く深いメッセージを持っています。「ほんとうに大切なものは目に見えない」というキャッチコピーは、物語の核をなすテーマとして、多くの観客に深い感銘を与えました。この作品は、視覚障害者教育の重要性や、人のつながりの力を改めて認識させるものとして、今後も人々の心に残ることでしょう。

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