ふるいちやすし

古市 やすし

古市 やすし（ふるいち やすし）は、1959年に生まれた日本の映画監督、そして音楽監督です。男性として、多岐にわたる芸術分野で活動を展開しています。

来歴と人物像

映画制作において、古市氏は監督業にとどまらず、脚本の執筆、撮影、編集作業、さらには作品に彩りを添える音楽制作まで、そのほとんど全ての工程を自ら手掛ける非常に稀有な才能を持っています。このようなスタイルは、特定の形式にとらわれず、自由な発想で映像作品を生み出すことを可能にしています。

彼は一貫して、他とは一線を画す独自の映像表現の探求に情熱を注いでいます。特に注目されるのは、映画製作における企画から撮影、編集、そして最終的な上映に至るまでの規模を意図的にコンパクトに集約させるという手法です。これにより、より人間的な温度感を持つ、血の通った表現を追求しながらも、同時に質の高い作品作りを実現させることを目指しています。この独特のスタイルを彼は「プチ・シネ」と名付け、提唱しています。これは、大規模な商業映画とは異なる、作家性の強い、よりパーソナルな映画作りへの彼の志向を示しています。

映画監督として、これまでに多様なテーマと表現の作品を発表しています。その代表作には、『彩～aja』、『艶〜The color of love』、『サイコロコロリン』、『下北ダブル生シュー』、『紫陽花』、『無言歌』、『千年の糸姫』などが挙げられます。これらの作品を通じて、彼の持つ多様な表現力と探求心がうかがえます。

また、音楽家としての顔も持ち合わせており、自身の監督作品のサウンドトラックを手がけることはもちろん、CM音楽の制作や、さまざまなジャンルのアーティストへの楽曲提供も積極的に行っています。UAのアルバム『11』に収録された「紅い花」や、Karena Karenのアルバム『格子越しの月』に収められている「麻痺」などは、作曲家としての彼の才能を示す例です。

監督作品以外でも、その手腕を発揮しています。長編映画『さかなかみ』（浜野安宏監督）では、撮影監督および音楽監督という重要な役割を担い、その仕事ぶりが高く評価されました。

彼の作品は、国内外の映画祭でも大きな注目を集め、多数の賞を受賞しています。2012年には、『彩～aja』がモナコ国際映画祭で、ベストオリジナルストーリー賞、ベストカメラタグラファー賞、ベストオリジナルミュージック賞、そして主演の笠原千尋が受賞したベストニューカマー賞という4冠を達成しました。翌2013年には、『艶〜The color of love』が同映画祭で最優秀アートフィルム賞を受賞しています。

さらに、2017年には『千年の糸姫』が、ロンドンフィルムメーカー国際映画祭において長編外国語映画部門の最優秀監督賞を受賞しました。同年にはアジア国際映画祭でも最優秀監督賞に輝き、同作品の主演である二宮芽生氏も最優秀新人女優賞を受賞するなど、作品、監督、主演女優と三拍子揃った評価を得ました。翌2018年には、インドネシア映画祭で最優秀作品賞に選ばれるなど、『千年の糸姫』は特に国際的に高い評価を得た作品と言えます。

映画製作に関する著書も出版しており、2013年6月には玄光社より『映画のようなデジタルムービー表現術』を刊行しています。この書籍は、彼の実践的な知識と独自の視点から、デジタルムービー制作の技術と表現方法について解説したものです。

古市やすし氏は、これからも独自の「プチ・シネ」スタイルを追求し、映像と音楽の世界で、既成概念にとらわれない表現を生み出し続けることが期待されます。

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