べてるの家

べてるの家：共に生きる、共に働く、ケアの共同体

北海道浦河町に拠点を置く「べてるの家」は、精神障害などを抱える当事者たちが、地域社会で共に生活し、働くことを目指す活動体です。1984年に発足し、社会福祉法人浦河べてるの家を中心に、有限会社福祉ショップべてるなど、多様な形態で運営されています。ここでは、当事者たちが生活共同体、働く場としての共同体、そしてケアの共同体という三つの側面を共有しています。

べてるの家の成り立ちと活動

べてるの家のルーツは、1978年に浦河赤十字病院の精神科に通う当事者たちが始めた「どんぐりの会」にあります。彼らは浦河教会の旧会堂を拠点に、日高昆布の産地直送販売などの事業を立ち上げ、社会参加への道を模索しました。現在では、日高昆布をはじめとする海産物や農産物の通信販売、カフェ「ぶらぶら」の運営など、多岐にわたる事業を展開しています。

べてるの家では、病気が重くなることや、生活や活動に支障が出ることすらも自然なこととして受け入れます。彼らの「べてる流」と呼ばれる生き方は、あるがままを受け入れる姿勢を大切にし、ケアに関わる人々から注目を集めています。また、利用者たちは全国各地で講演活動を行い、その様子を収めたビデオを販売することで、自立した生活を経済的に支えています。

毎年開催される「べてるまつり」では、「幻覚妄想大会」などユニークな企画が行われ、地域住民や研究者など多くの人々が交流する場となっています。過去には、佐藤初女、香山リカ、武田鉄矢などの著名人がゲストとして参加し、筑紫哲也、上野千鶴子、熊谷晋一郎、斎藤環といった知識人もべてるを訪れています。

べてるの家の先進的な取り組み

べてるの家の取り組みで特に有名なのは「当事者研究」です。これは、当事者が自らの病気や生活の困難を研究し、その経過や対処法を共有する活動です。また、社会参加を支える充実した支援プログラムや、平均よりも少ない投薬量、病床数の削減など、先進的な試みも行われています。これらの取り組みは、世界中から年間2500人以上の研究者や見学者を引き寄せています。

べてるの家は、厚生労働省や国立精神・神経センターから、日本の精神保健におけるベストプラクティスの一つとして選ばれています。また、保健文化賞や毎日社会福祉顕彰など、数々の賞を受賞しています。

さまざまな連携と地域医療への貢献

現在、べてるの家は、有限会社、社会福祉法人、NPO法人などが連携し、地域生活を支える様々な事業を展開しています。長年にわたり医療面からべてるの家を支えてきた精神科医の川村敏明氏は、浦河赤十字病院を退職後、「浦河ひがし町診療所」を開業し、引き続き地域精神医療に貢献しています。

名前の由来：聖書の「ベテル」とドイツのベーテル

「べてる」という名前は、旧約聖書の創世記に登場する「ベテル」に由来します。ヤコブが神の家である場所を「ベテル」と名付けたという故事から、宮島利光牧師が名付けました。また、ドイツのベーテルにある、障害の有無にかかわらず共に暮らす人々のコミュニティも、名前の由来となっています。

当事者研究：べてるの家の中心的な活動

「三度の飯よりミーティング」を合言葉に、べてるの家ではメンバー同士が集まり、病気や生活について話し合うことを大切にしています。特に「当事者研究」は、べてるの家発祥の重要な活動です。ここでは、自分の病気にオリジナルの名前をつけたり、病気や生活の苦労のパターンやメカニズムを研究し、その経過や対処法を報告・発表します。この活動は、他の施設や医療機関にも広がり、当事者研究全国交流集会も開催されています。

さまざまな情報発信

べてるの家に関するドキュメンタリービデオや書籍も多数制作・出版されており、彼らの活動や思想をより深く知ることができます。

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