ほぼシングルベスト

1999年12月1日、ビクターエンタテインメントよりリリースされた『ほぼシングルベスト』（ホボシングルベスト）は、宮村優子のキャリアにおける9枚目のアルバム作品であり、ベスト盤としては『めっちゃベスト』に続く2作目にあたります。このアルバムの最大の特徴は、タイトルにもそのニュアンスが込められている通り、オリジナルアルバムには一度も収録されたことのない楽曲のみで構成されている点です。先行するベストアルバム『めっちゃベスト』がオリジナルアルバムからの代表曲を中心にセレクトされていたのに対し、本作はシングルB面曲やコンピレーション盤、タイアップ先の企画盤などに収録されていた、ファンにとっては貴重な音源を集めた作品となっています。結果として、中にはこのアルバムで初めて日の目を見た楽曲も含まれています。

収録された楽曲は、宮村優子が声優・歌手として関わった幅広いメディアやプロジェクトを反映しており、その活動の広がりを感じさせます。例えば、「くるみパン」は、彼女がヒロインとして出演したラジオドラマ『魔神英雄伝ワタル外伝 ピュアピュアヒミコ』のエンディングテーマとして使用された3rdシングルの表題曲です。このシングルのカップリング曲である「そんなKISSじゃ許さない」は、彼女がパーソナリティを務めたラジオ番組『宮村優子の直球で行こう!』のテーマソングとして知られています。

また、アニメや特撮作品とのタイアップ曲も多く含まれています。「蒼い風の向こうに」はOVA・ラジオドラマ『綾音ちゃんハイキック!』のエンディングテーマとして、「街や森や月へ」はラジオドラマ『悪霊狩り〜ゴースト・ハント〜』の主題歌として、それぞれシングルのカップリング曲として発表されました。「ワイルド・ワイルド・エンジェル」と「蜜の光」は、テレビアニメ『超魔神英雄伝ワタル』のキャラクターソングとして制作された楽曲です。

特に注目すべきは、「Go! Love Sick」の収録経緯です。この曲は、宮村優子自身が俳優として出演した特撮ドラマ『救急戦隊ゴーゴーファイブ』のボーカルアルバムに収録されていたイメージソングでした。本来、他社が版権を持つ楽曲であるにも関わらず、オリジナルの音源そのままに本作に収録されるという珍しいケースでした。

さらに、他の声優やタレントとの共演や、ラジオ番組との連携から生まれた楽曲も多数収録されています。岩田光央との共唱曲は多く、「ENDLESS PARTY」はラジオドラマ『ぼくのマリーWARS!!』のオープニングテーマとなった2ndシングル、「Growin’ Up!」は二人のラジオパーソナリティコンビ5周年を記念して作られた楽曲です。また、ラジオCD『爆ジルCD「北枕」』からは、岩田光央との「Hey!Hey!最強のメロディー」、氷上恭子との「結婚しようよ」が選ばれています。浅田葉子とは、サウンドトラックアルバム『ぼくのマリーRadio Attack』からの「夢みる乙女たち」をデュエットしています。

その他、シングルのカップリング曲として、「KANON」カップリングの「One Summer Day」、「根性戦隊ガッツマン」カップリングの「根性サンバ」、『オー・チンチン』（岩田光央歌唱）カップリングでぶんけかなのカバーである「おっぱいがいっぱい」などが収録されています。「いちばん大好き〰終わる夏のフレイヴァー」はラジオCD『ラジオじゃ聞けないぼくマリWARS!!』からの楽曲で、後にオーケストラアレンジ版も存在します。「水曜日の惑星」はシングル「アリガト」のカップリングで、先行ベスト『めっちゃベスト』にも収録済みですが、本作にも改めて収められています。

このように、『ほぼシングルベスト』は、シングルA面以外の楽曲や、様々な企画盤に埋もれていた音源を中心に集めることで、宮村優子の歌手としての多角的な魅力や、当時の声優業界におけるメディアミックス展開の一端を示す貴重なコレクションとなっています。オリジナルアルバムだけでは網羅できない、彼女の「ほぼ」全てのシングル関連曲やアルバム未収録曲を聴くことのできる、ファンにとっては欠かせない一枚と言えるでしょう。

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