ほめ殺し

ほめ殺し（ほめごろし）

概要

ほめ殺しとは、特定の対象を称賛することで意図的にその対象の評価や才能を貶める行為を指します。本来は、対象を褒めることにより、その人の成長や成功を妨げることを意味していましたが、最近ではその行為自体の意図が含まれるようになっています。

伝統芸能におけるほめ殺し

ほめ殺しの概念は、元々は日本の伝統芸能、特に歌舞伎といった舞台芸術の世界で使われてきました。若手の有望な役者や芸人が必要以上に褒め上げられることで、過信や慢心に至り、その結果として才能が発揮できなくなるという現象があるのです。オーバーピアリーディングがもたらす影響は、称賛から威厳や自己過信を生み出し、若手の成長を妨げることがあります。

また、ほめ殺しは競争相手に対しても利用されることがあります。たとえば、ある競合者を過剰に持ち上げることで、その者が自らの限界を見誤るように仕向けるのです。これにより、スキャンダルや不祥事を誘発させ、その社会的信用を落とさせることも目的とされています。こうしたケースでは、自身の力を過信した結果として、大きな失敗を招くことがあり得ます。

政治におけるほめ殺し

政治の文脈でもほめ殺しは非常に興味深い形で利用されます。この戦法は、攻撃対象となる政治家や政治団体に対して、直接的な批判を避け、あえて賛美を通じて皮肉や告発の意図を盛り込むことによって機能します。このような形でのほめ殺しは、相手のイメージを下げることを目的としており、名誉毀損や脅迫罪に抵触しない形での攻撃手段として位置付けられています。

1987年には、右翼団体「日本皇民党」が、自民党の竹下登を「日本一金儲けが上手い竹下さん」と称賛する街頭宣伝を行い、一躍有名になりました。この事件は後に「皇民党事件」として語られるようになり、浜田幸一がこの表現に関する重要な人物として挙げられています。彼は実際に団体の本部を訪れて、活動を止めるよう求めた際に「お前らの行為はほめ殺しだ」と発言しました。

慣用句

ほめ殺しは、文学や句にも表現されています。たとえば、「役者殺すにゃ刃物はいらぬ、ものの三度も褒めりゃよい」という句は、過剰な称賛が引き起こす逆効果を見事に表現しています。また、「先生と呼ばれるほどの馬鹿でなし」という表現は、称賛の裏に潜む滑稽さを浮かび上がらせるものです。

結論

ほめ殺しは、伝統芸能や政治の中でさまざまな形で顕在化し、対象をだめにするための手段として機能します。この言葉が持つ意味は時代とともに進化していますが、その影響力や危険性は今なお重要なトピックであり、さまざまなジャンルでその事例が見られます。

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