まごころ (太田裕美のアルバム)

太田裕美の記念すべきファーストアルバム『まごころ』は、1975年2月1日にCBSソニーより発表されました。歌手としてのキャリアをスタートさせたばかりの彼女が、瑞々しい歌声で青春の情景を描き出したこの作品には、先行してリリースされ多くのリスナーに親しまれたデビューシングル「雨だれ」を含む、全12曲が収録されています。アルバム全体を通して、若々しい感性と透明感あふれるサウンドが特徴であり、聴く者に爽やかな印象を与える一枚となっています。

本作の楽曲制作には、当時の日本の音楽シーンを牽引していた錚々たる顔ぶれが集結しました。作詞は、時代を写し取る繊細な言葉遣いで知られる松本隆が多くの曲を手掛け、作曲は、数々のヒット曲を生み出したメロディメーカー、筒美京平が担当しています。そして、楽曲の世界観を彩る編曲は、萩田光雄が主に担当しましたが、一部楽曲では筒美京平自身も編曲を手掛けており、多彩なアプローチが試みられています。

アルバムの幕開けを飾るのは、太田裕美のデビューを鮮烈に印象づけたシングル曲「雨だれ」です。哀愁を帯びながらも希望を感じさせるこの曲は、彼女の代表曲の一つとなりました。また、当時の社会的な話題であった北海道の幸福駅ブームに着想を得たと思われる「幸福ゆき」も収録されており、時代の空気を感じさせます。さらに特筆すべきは、太田裕美自身が作詞・作曲を手掛けた「ひとりごと」と「グレー&ブルー」です。これらの楽曲からは、彼女自身のパーソナルな感情や音楽的ルーツが垣間見え、シンガーソングライターとしての才能の萌芽が感じられます。デビューシングルのカップリング曲であった「白い季節」も収録されており、「雨だれ」と対をなす存在感を放っています。アルバムの終盤には「雨だれ」のリプライズ・バージョンが配され、物語性を感じさせる構成となっています。

『まごころ』は、太田裕美という稀有な才能が世に出た記念碑的な作品です。彼女の清涼感あふれるボーカルと、松本隆、筒美京平、萩田光雄といった一流のクリエイターが生み出す楽曲が幸福な形で融合し、唯一無二の世界観を確立しました。青春時代の甘酸っぱさ、揺れ動く心情、そして未来への希望といった普遍的なテーマが、透明感あふれるサウンドに乗せて歌われ、多くの若者の共感を呼びました。このアルバムで示された音楽性は、その後の彼女のキャリアにおける基礎となり、日本のポップス史においても重要な位置を占める作品として、今なお色褪せることなく輝き続けています。

アルバムに収録された全12曲のリストは以下の通りです。

A面
1. 雨だれ
太田裕美のデビューシングルA面曲。
2. 幸福ゆき
編曲：筒美京平
当時ブームとなった「幸福駅ゆきの列車」を歌った楽曲。
3. あなたに夢中
4. 雨の予感
5. ひとりごと
作詞・作曲：太田裕美
6. 夏の扉

B面
7. やさしさを下さい
8. 心さわぎ
編曲：筒美京平
9. グレー&ブルー
作詞・作曲：太田裕美
10. ぬくもり
11. 白い季節
編曲：筒美京平
デビューシングル『雨だれ』のB面曲。
12. 雨だれ（リプライズ）

（特記なき楽曲の作詞は松本隆、作曲は筒美京平、編曲は萩田光雄が担当。）

『まごころ』は、太田裕美の音楽世界の原点として、その後の活躍を知る上でも必聴の一枚と言えるでしょう。青春の輝きを閉じ込めたようなこのアルバムは、時代を超えて多くの人々に感動を与え続けています。

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