まぼろしの市街戦

まぼろしの市街戦（Le Roi de Cœur）

1966年に公開されたフランス映画『まぼろしの市街戦』は、戦争と人間の知られざる側面を描いた作品である。英語タイトルは『King of Hearts』で、アラン・ド・ブロカが監督を務めた本作は、その独特なストーリー展開と魅力的なキャラクターによって見る者を惹きつける。

あらすじ

この物語は、第一次世界大戦の終わり際の1918年10月から始まる。ドイツ軍は北フランスの小さな町から撤退せざるを得なくなり、来るイギリス軍を全滅させるために時限爆弾を仕掛ける。その結果、町は無人となり、精神病院の患者たちとサーカスの動物たちだけがその場に取り残された。

イギリス軍の大佐は、フランス語が話せる通信兵プランピックに、爆弾の解除を命じる。プランピックが町に潜入するが、そこで待ち受けていたのは残留していたドイツ兵だった。彼は精神病院に逃げ込み、そこで患者たちに「ハートのキング」と名乗ることで、彼らの「王」として迎えられることになる。

患者たちは、トランプ遊びや役割演技を通じて、日常から解放された時間を楽しむ。プランピックもその奇妙な現実に引き込まれていくが、爆弾の解除という任務が頭から離れない。彼は患者たちを外に連れ出そうと試みるが、彼らは外に出ることに恐れを抱いてしまう。

時が経つにつれ、爆弾の起爆装置がどこにあるか分からないまま、プランピックは町の中でコクリコという少女と過ごす。コクリコから、町の時計台に秘密があることを教えられたプランピックは、そこが時限爆弾の起爆装置が仕掛けられている場所だと気づく。

プランピックは、自らの身を挺して装置を解除することを決心し、見事に爆発を回避した。しかし、彼の活躍を祝うのも束の間、町に急遽戻ってきたドイツ軍と、先に町に入ったイギリス軍が遭遇し、壮絶な白兵戦が始まる。患者たちはその様子をバルコニーから眺め、何とも言えない虚無感を共有する。

製作背景

この映画の原案は、モーリス・ベッシーがド・ブロカに元になった新聞記事と、第二次世界大戦中の実話を元にしたものである。製作はフランスのユナイテッド・アーティスツとイタリアの制作会社によって行われ、多くのシーンはサンリスで撮影された。

評価と影響

フランスでの公開時にはあまり評価されなかった本作も、数年の後にアメリカで公開されるとカルト的な人気を得る。映画秘宝など多くの映画専門誌でも高い評価を受け、選者たちの間では名作と扱われている。

特に大友克洋は本作を含む多くの映画に影響を受けており、そのDVDコレクションにも本作が含まれている。彼のように多くのクリエイターたちに影響を与えた『まぼろしの市街戦』は、戦争と狂気をテーマにしつつも人間の繋がりを描き出す特異な作品であることを今でも忘れてはならない。

結論

『まぼろしの市街戦』は、戦争の悲劇性とそこに潜む人間的な温かみを描いた映画であり、その独特な視点とストーリー展開は見る者に深い印象を与える。戦争という厳しい backdrop の中、どのように人間が生き、また生き延びようとするのかを見つめ直す機会を提供している。本作を観ることで、観客は戦争の影の部分と、それでもなお生きることの意味を考えさせられるのだ。

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