みかづき (小説)

小説『みかづき』の概要

『みかづき』は、作家・森絵都によって描かれた長編小説で、学習塾の経営を通じて、日本の教育の変遷や親子3世代にわたる家族の奮闘を描いています。この作品は、2014年5月号から2016年4月号まで『小説すばる』で連載され、2016年9月に集英社から刊行されました。楽しい表面の裏側には、教育問題や家族の絆の葛藤が織り込まれており、読者に深い感動を与えています。

あらすじ

物語は1961年、千葉県習志野市から始まります。ここに住む大島吾郎は、小学校の用務員として子どもたちに無償で勉強を教えていました。そして、そこで出会った赤坂蕗子に非凡な才能を感じます。蕗子の母である千明は、シングルマザーとして蕗子を育てる文部官僚の女性です。彼女は、吾郎と共に補習塾を始めることを提案し、二人は結婚の後、八千代市で塾を開業します。そこで吾郎は、ワシリー・スホムリンスキーの評伝を書くなどしながら、塾経営に携わります。

やがて、2人の間には3人の娘が生まれ、塾も地域の有力な存在となります。しかし、家族内では塾の経営方針を巡って対立が生じ、吾郎は家を出てしまいます。一方、千明は塾を進学塾に方向転換し、さらに成長させていきます。長女の蕗子は母親とは距離を置きながら、公立学校の教員として活動。次女の蘭は塾経営に興味を示し、三女の菜々美は自らの道を求めて親に反抗します。3人はそれぞれ異なる道を歩み、家族の絆は複雑なものになります。

時が経ち、蕗子は夫を失い、子供の一郎と実家に戻ります。一郎は塾に通えない子どもたちのために無料の学習塾を立ち上げ、自分自身の熱い教育への志を持って活動を始めます。一郎の行動は、確かに大島吾郎の血が流れていることを意識させられる出来事となります。

登場人物

物語は吾郎の視点から始まり、続いて千明の視点に移り、やがて孫の一郎の視点で描かれます。登場人物は多彩で、彼らの内面も深く掘り下げられています。

• - 大島吾郎: 元用務員で、補習塾を立ち上げるが、経営方針の違いから家族を去る。
• - 赤坂千明: シングルマザーとして娘を育て、吾郎と共に塾を経営。実直で教育に熱心。
• - 上田蕗子: 長女。家族から離れ、公立学校の教員として活動。
• - 上田一郎: 蕗子の長男。塾に通えない子どもたちのために活動を開始する。

テレビドラマ化

この小説は、NHK総合の「土曜ドラマ」として2019年にテレビドラマ化され、幅広い視聴者に親しまれました。学び続けることの重要性や、教育の本質について考えさせられる作品です。

受賞歴

『みかづき』はその内容が評価され、2017年には中央公論文芸賞を受賞し、その他にも多くの書評や賞を得ています。

この小説は、家族の絆や教育の意義、そして時代の変化を通じて、私たちの心に深く響くテーマを扱っています。読者は登場人物の成長や葛藤を通じて、教育の在り方や家族の大切さを再認識することができるでしょう。

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