みどりの守り神

みどりの守り神

『みどりの守り神』は、藤子・F・不二雄先生によって1976年に発表されたSF漫画です。環境問題をテーマにした作品で、発表当初から多くの読者に感動を与え続けています。

概要

本作は、自然と人間の関わり方について深く考えさせられる内容です。作中では、植物と動物の関係を共生として捉え、植物を地球を守る存在として解釈しています。人間の身勝手な行動が、この共生関係を壊してしまうことへの警鐘を鳴らしています。作者である藤本先生自身も、環境問題への関心の低さをノアの方舟に例え、危機感を訴えていました。

物語のラストでは、主人公たちが未来への希望を胸に新たな一歩を踏み出す姿が描かれます。絶望的な状況の中でも、再生への希望を捨てずに生きる人々の姿は、読者に勇気を与えてくれます。藤子先生は生前、「読後感の良い漫画を描きたい」と語っており、悲劇的な設定の中でも、明日につながる希望を描くことを大切にしていました。

あらすじ

深見みどりは、家族旅行で沖縄へ向かう飛行機に乗っていましたが、事故により飛行機は高山に墜落します。奇跡的に一命を取り留めたみどりは、一面の密林が広がる光景を目にします。同じく生存者の学生・坂口五郎と共に救助を求めますが、どこまで歩いても密林は続くばかり。ようやく見つけた人家には人影はなく、動物の気配すらしません。坂口は、核戦争によって全ての動物が死滅したのではないかという恐ろしい推測を口にします。

旅を続けるうちに、二人は不思議な体験をします。空腹時には美味しい木の実が現れ、足の傷は一晩で癒え、川で溺れた際にはツタに助けられます。やがて二人は、緑に覆われた変わり果てた東京にたどり着きます。そこで見つけた新聞から、強力な細菌兵器によって人間を含む全ての生物が滅亡したことを知ります。絶望した坂口は、みどりの制止を振り切り、ジャングルの中へと姿を消してしまいます。

一人残されたみどりは、絶望の中で自殺を図ります。しかし、その後、見知らぬ男に助けられ、世界の秘密を知ることになります。男・白河貴志は、細菌が低温に弱いことを利用して生き延びていました。みどりは飛行機事故の際に、白河は雪崩に巻き込まれた際に低体温状態となり、細菌から身を守ることができたのです。植物は突然変異を起こし、生き残った人間を守るように進化していました。みどりがジャングルで無事だったのも、手首の傷が癒えたのも、全ては植物、すなわち「みどりの守り神」のおかげだったのです。

世界の秘密を知ったみどりは希望を取り戻し、白河と共に他の生存者を探す旅に出ることを決意します。

登場人物

深見 みどり
飛行機事故の生存者。世界の真実を知り絶望するが、後に希望を取り戻す。
坂口 五郎
もう一人の生存者。自己中心的でわがままな性格。世界の真実を知り発狂し、姿を消す。
* 白河 貴志
元テレビディレクター。みどりを介抱し、世界の秘密を教える。生存者探しの旅に出る。

初出時からの変更点

単行本化の際に加筆が行われ、ページ数が増加しています。坂口の性格描写がより激しく、不安定なものに変更されています。また、みどりが自殺する前の状況も変更されています。

アニメ

「藤子・F・不二雄のSF短編シアター」でアニメ化されています。

映画との関連

映画『ドラえもん のび太と緑の巨人伝』の予告編に、本作に登場する東京ジャングルとよく似たカットが登場します。

まとめ

『みどりの守り神』は、環境問題への警鐘を鳴らしながらも、希望を忘れずに生きることの大切さを教えてくれる作品です。藤子・F・不二雄先生のメッセージが込められた、感動的なSF漫画として、これからも多くの読者に愛され続けるでしょう。

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