みなさん、さようなら (小説)

映画『みなさん、さようなら』

『みなさん、さようなら』は日本の作家、久保寺健彦による同名の小説を原作とした映画であり、2013年に公開されました。物語は、団地で生活を続ける青年・渡会悟の成長を中心に展開しています。この作品は、久保寺の第一回パピルス新人賞受賞作のため、深い内容と独特な視点を持ち、観る者に印象を残します。

あらすじ

1981年春、芙六小学校から107名の卒業生が新しい一歩を踏み出す中で、渡会悟もその中の一人として巣立とうとします。しかし、悟は中学校に進学することを選ばず、団地内のみでの生活を決意します。彼のこの決断は、卒業式でのある出来事が引き金となったのです。

悟は団地内の仲間たちと関わりながら、自己流の生活を確立します。毎日5時に起き、自らスケジュールを組み、体力づくりや読書に明け暮れるのです。彼は「団地の人間は俺が守る」という信念を持ち、同級生たちの家を夜にパトロールする「夜の散歩」も欠かしません。こうした日常の中で、彼は彼なりの充実感を見出していきます。

次第に、彼は団地内のケーキ屋で働くようになり、友人たちとの交流を深めていきます。しかし、同級生たちは年々団地を離れていき、悟を置いていく様子が描かれます。果たして彼の選んだ道は、孤独を招くのか、彼の人生を特別なものにするのか、選択の意味が問われる瞬間です。

20歳になった悟は、昔から好意を寄せていた同級生の緒方早紀と再会します。彼女との交際は彼に新しい感情をもたらしますが、団地の外に出ることへの不安も芽生えるのです。悟は彼女の望むカラオケボックスに行くため、団地外の世界との接触を試みますが、体調を崩し倒れてしまいます。この出来事が彼の人生にどんな影響を及ぼすのか、観客はハラハラすることでしょう。

登場人物

物語には多彩なキャラクターが登場します。主人公・渡会悟は、小学校卒業式の事件を経て独自の生き方を貫く若者です。彼の母、渡会日奈は温かく見守りつつも、彼の選択を支持する人物として描かれています。また、彼の親友薗田憲明や、思春期の悩みを共有する松島有里など、団地内での友情と葛藤を表現したキャラクターたちも重要な役割を果たします。

映画は中村義洋監督のもと、濱田岳が悟を演じ、その成長をリアルに描写します。深いテーマを持つ作品であり、美しい映像と共に視聴者に感動を与えます。主題歌にはエレファントカシマシの「sweet memory」が起用され、ストーリーとリンクした心温まる音楽が作品を引き立てます。

この映画は、団地という特異な場所での人々の絆と葛藤を描いた深い物語であり、観る者にさまざまな感情を呼び起こします。人間関係の大切さや、人生の選び方について考えさせられる作品です。

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