みな殺しの歌

『みな殺しの歌 凶銃ワルサーP38』

大藪春彦著の『みな殺しの歌 凶銃ワルサーP38』は、1961年に発表されたハードボイルド小説です。この作品は、1960年の1月から12月にかけて「アサヒ芸能」誌に連載され、その後単行本として第一部・第二部に分かれて刊行されました。のちに第二部は『凶銃ワルサーP38』というタイトルで再出版され、電子書籍や映像化もされています。

あらすじ

物語は、衣川恭介という青年の復讐劇から始まります。彼の兄は、仲間とともに合成モルヒネの秘密工場を経営していましたが、恋人である真美子との婚約を機に、その暗い世界から足を洗う決意をします。しかし、この決断が彼の運命を大きく変えることになります。兄の決断を受けて、彼の仲間であった7人は、恐怖から兄を残酷に殺害します。これがきっかけで恭介は復讐を誓います。

恭介は、まずその中の一人である島津を凶銃ワルサーP38で殺し、彼の復讐は始まります。しかし、次なる標的である三国を狙う最中、意図しない殺し屋との対峙に遭遇し、三国を逃してしまいます。さらに、警察から逃げるため、恭介は民家に侵入し、そこの娘である由紀子を人質に取って脱出を試みます。このような緊迫した状況の中で、彼は真美子の安全を確保するために、彼女が田辺にさらわれていることを知ります。

恭介は、愛銃であるワルサーP38を携え、残された6人の仲間と田辺の支援を受けて、政界の黒幕とされる元国務大臣の増村を標的にします。作品は、彼が繰り広げる波乱万丈の復讐劇と、その中での人間ドラマを描いています。

主な登場人物

• - 衣川恭介: 新宿でバーを経営する青年。運命的にワルサーP38を手に入れ、自身の復讐に挑む。
• - 島津: 品川精化の社長。恭介の復讐の標的の一人。
• - 三国: パチンコ屋の経営者で、恭介の敵。
• - 大村: キャバレーのオーナー。
• - 田辺: 品川精化の専務取締役で、元用心棒。正義感の強いが危険な役回りを背負う。
• - 舟橋: 共立建設の社長。
• - 増村: 元国務大臣で、背後に潜む黒幕。
• - 真美子: 恭介の兄の婚約者で、物語の重要な女性キャラ。
• - 中村由紀子: 声楽家の娘。恭介の人質になってしまう。

出版履歴

この作品は、多くの出版社から再版されており、1965年には徳間書店から第二部のメインタイトルが『凶銃ワルサーP38』として刊行されました。また、関連するメディア作品も多数存在し、特に劇場用映画は1960年に公開されており、人気を博しました。

メディア作品

• - 劇場用映画: 『みな殺しの歌より 拳銃よさらば!』が1960年に東宝で公開。
• - 劇画: 『凶銃ワルサーP38』が1974年に作画された。

『みな殺しの歌 凶銃ワルサーP38』は、復讐と人間の暗い面を描くハードボイルドな作品で、多くの読者を魅了し続けています。

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