めざせ!イカ天 ロックンOL物語

めざせ!イカ天 ロックンOL物語：社会現象と青春の共鳴

1990年5月12日、TBSの『ドラマチック22』枠で放送された単発ドラマ『めざせ!イカ天 ロックンOL物語』。当時、社会現象を巻き起こすほどの絶大な人気を誇っていた『三宅裕司のいかすバンド天国』（イカ天）を舞台に、女性たちの友情と夢を描いた作品です。

このドラマ最大の特徴は、人気番組『イカ天』の世界観を余すことなく再現している点です。番組のスタジオセット、音楽、演出、そしてナレーションまで、『イカ天』本編と全く同じものが使用されています。三宅裕司さんと相原勇さんも本人役で出演し、視聴者はまるで『イカ天』の一部を覗いているかのような臨場感を味わえたことでしょう。ただし、審査員は出演していませんでした。

全国ネット放送だったため、『イカ天』が放送されていなかった地域でも視聴が可能だったのも大きなポイントです。これにより、より多くの視聴者がこの青春ドラマに共感し、熱狂的な支持を得ることになりました。

物語：友情、挫折、そして再起

物語の中心は、群馬県で小学校時代からの親友、田村由里子と山中五月です。五月がボーカルを務めるバンド『め組BAND』は、『イカ天』本選出場を果たしますが、演奏中に「ワイプ」（演奏中断）されてしまいます。この出来事がきっかけで、バンドは解散の危機に陥ります。

その後、五月は新たなバンド『ザ・地球丸』を結成し、『イカ天』へのリベンジを誓います。女性だけで構成された『ザ・地球丸』は、ビデオ審査を通過し、本選出場権を獲得します。しかし、直前でベーシストが逮捕されるというアクシデントが発生します。

ピンチに陥った五月は、OLである親友の由里子に代役を依頼します。由里子は、これまで音楽とは無縁の生活を送っていましたが、次第に音楽の魅力に取りつかれていきます。一方、五月自身にも他のバンドからの移籍話が舞い込みます。果たして、『ザ・地球丸』の運命、そして五月と由里子の友情は、どのように展開していくのでしょうか？

個性豊かな登場人物たち

ドラマを彩る個性豊かな登場人物たちも魅力の一つです。OLからベーシストに転身する由里子、江戸っ子風の性格でバンドを引っ張る五月、看護師でキーボード担当の豊田佑子、魚屋を経営するドラム担当の鍋島厚子、ライブハウスで働くギタリストの北村加代子、そして過去に問題を抱えるベーシストの内田アキエなど、それぞれの境遇や個性を持つ女性たちが織りなす人間模様は、見どころの一つと言えるでしょう。

さらに、サラリーマンでマネージャーを務める角田ヒロシ、ライブハウスのオーナーである鈴木勉、そして由里子のいとこで、ミュージシャンを目指す本田一葉といった男性キャラクターたちも、物語を盛り上げます。

イカ天の空気感と時代背景

ドラマは、『イカ天』の雰囲気を巧みに再現することで、当時の社会情勢や若者の文化を鮮やかに描き出しています。番組内で紹介された『イカ天バンドフラッシュ』では、カブキロックス、マサ子さん、NORMA JEAN、宮尾すすむと日本の社長、C-BA、One Night Stands、マルコシアス・バンプ、人間椅子といった、当時人気を博した数々のバンドが登場します。これらのバンドの演奏シーンは、視聴者にとって懐かしさや興奮を呼び起こすことでしょう。

また、劇中で使用された楽曲も、『イカ天』の音楽性を反映したものとなっています。ドラマの展開に合わせて流れる楽曲は、物語に深みと情感を与え、視聴者の感情を揺さぶります。

そして、ビデオ化

放送終了後、『めざせ!イカ天 ロックンOL物語』はTBSビデオとクラリオンソフトからビデオ化されました。現在では入手困難な作品ですが、一部レンタルビデオ店で取り扱われている場合もあるようです。当時を懐かしむ方、あるいは青春群像劇に興味のある方にとって、見逃せない作品と言えるでしょう。

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