もう頬づえはつかない

小説『もう頰づえはつかない』

『もう頰づえはつかない』は、日本の作家見延典子による小説で、1978年に早稲田大学の卒業制作として発表されました。この作品は、女性の愛と性について探求する内容であり、そのリアリティから多くの読者に共感を呼びました。彼女は、卒業前の作品を『早稲田文学』に発表し、すぐに講談社から書籍として刊行されました。

この物語は、一人の女子大生が二人の男性と交わる中で体験する恋愛を描いています。渇いた筆致と冷静な視点から語られるストーリーは、特に同世代の学生や社会人女性から「まるで自分のことのようだ」と評され、多くの支持を集めました。結果として本作は50万部以上の売上を記録し、広く愛される著作となりました。

映画化

1979年には、東陽一監督によって映画化され、アート・シアター・ギルド（ATG）が配給しました。映画には桃井かおりや奥田瑛二、森本レオなどの有名キャストが起用され、桃井の演技は特に高く評価されました。また、村上弘明が映画の終盤に短い出演を果たしており、若き日の彼が注目を集めるきっかけにもなりました。最初は新人を主演に考えていたものの、桃井かおりの相手役を考慮して奥田が主役に抜擢されました。

あらすじ

映画は1970年代の東京を舞台に、女子寮に住む普通の大学生、まり子の生活を描いています。彼女は仕送りを断たれ、アルバイトで生活を支えています。過去にルポライターの恒雄と交際していたものの、彼が突然姿を消した後は、軽薄な大学生、橋本と関係を持つことになります。

まり子は、アルバイト先の美容室で起こった事件がきっかけで仕事を失ってしまいます。しかし、そんな彼女の元に半年ぶりに恒雄が現れ、彼女の心の中で再び葛藤が生まれます。やがてまり子は妊娠に気づくものの、中絶を決意します。相手の恒雄から必要なサインを取るのが難しい中、まり子は自らの判断で行動を起こします。

恒雄との直接的な関わり合いがもたらす圧力や、橋本との関係が複雑になる中で、彼女は自分の信念と向き合っていきます。最終的に、偽造したサインで中絶手術を受ける決断を下したまり子は、橋本に別れの手紙を残し、新たな一歩を踏み出す姿が描かれています。

音楽と主題歌

この作品には、寺山修司作詞、田中未知作曲、J. A.シーザー編曲の「もう頰づえはつかない」という主題歌があり、荒井沙知によって歌われました。1979年にビクターから発売され、多くのファンに親しまれました。また、この曲は他のアーティストによるカバーも行われ、その影響力は続いています。

受賞歴

桃井かおりの演技は、第22回ブルーリボン賞主演女優賞を受賞するなど、多くの賞を受けました。彼女はこの作品を含む三作での受賞が評価され、映画界での存在感を強めました。また、多くの映画祭でも受賞歴があり、作品全体としても日本映画の優秀な作品と認識されています。

以上のように、『もう頰づえはつかない』は文学と映像の両方で成功を収め、生き生きとした物語が多くの人々に愛され続けています。

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