もしもボックス

もしもボックス：ドラえもんの不思議な電話ボックス

藤子・F・不二雄のSF漫画『ドラえもん』に登場する「もしもボックス」は、物語を大きく動かす重要なひみつ道具です。一見するとレトロな公衆電話ボックスに似たその外観からは想像もつかない、世界を変える力を持っています。

外観と基本的な使い方

1950～60年代の公衆電話ボックスを思わせるデザインのもしもボックス。中に入り、電話を使って「もしも○○○だったら」「＊＊な世界を」と願望を伝えれば、現実世界が変化します。電話機のベルが鳴れば設定完了の合図。元の世界に戻るには、再びボックスに入り「元の世界に戻して」と言えばよいのです。

一見シンプルですが、ユーザーの意図を完全に汲み取るわけではなく、願望と結果にずれが生じることもあります。「お金のいらない世界」を例に挙げると、ユーザーが想像する「お金が不要な便利な世界」ではなく、「お金がマイナス価値を持つ世界」が作られてしまうなど、皮肉な結果になることも。基本的には、良い結果と悪い結果のバランスは保たれているようです。

パラレルワールドとの関係性

もしもボックスが作り出す世界は、パラレルワールドの一種だと解釈されています。ドラえもんだけでなく、妹のドラミも所有しており、ドラミのボックスは映画版では花柄のデザインにアレンジされているなど、作品によってデザインが微妙に異なる描写も見られます。

いくつかの作品では、もしもボックスが既存の平行世界の中から条件に合う世界を選んで移動させる道具として描かれていますが、一方、現実世界そのものを変えてしまう道具という描写もあります。このため、もしもボックスが作り出す世界の仕組みは、作品によって一定していないのが現状です。

アニメ版における描写

テレビアニメ版では、もしもボックスに関する様々な設定が追加されています。例えば、ドラえもんのボックスには「立ち小便禁止」の文字が書かれていたり、電話機に架空の故障連絡先が表示されていたりと、細かなディテールが加えられています。また、現代で起こった変化が未来にも影響を与えるという設定や、小型化された「もしもホーン」というバリエーションも登場しています。

さらに、アニメ版では、もしもボックスで作り出された世界を、その世界に住む人々が「普通の世界」として認識しているという興味深い描写があります。世界が変化したことに気付いているのは、ボックスを使用した人物と、使用時に一緒にいた一部の人物だけという設定は、この道具の不思議な性質を際立たせています。

多様な「もしも」の世界

もしもボックスによって生み出された世界は多岐に渡ります。

凧揚げや羽根つきのない世界
昼夜が逆転した世界
貨幣価値がマイナスの世界
あやとりで全てが決まる世界
音が存在しない世界
鏡が存在しない世界
物価が極端に安い世界
眠れば眠るほど偉くなる世界
パパがアメリカへ転勤する世界
魔法の世界
のび太が女の子になる世界
のび太が3歳児になる世界
スネ夫の家が貧乏になる世界
昼寝が競技になる世界
叱っちゃいけない世界
毎日が母の日の世界

これらのエピソードを通して、もしもボックスの多様な可能性と、それによって引き起こされる様々な出来事が描かれています。これらのエピソードは、単なるユーモラスな物語にとどまらず、人間の願望や社会構造、そして現実と幻想の狭間にある複雑なテーマを問いかけるものとなっています。

道具としての謎と魅力

もしもボックスは、その機能の曖昧さと、そこから生まれる予測不能な展開によって、読者や視聴者を常に惹きつけてきました。「もしも」というシンプルな発想から、無限の可能性が生まれるという、この道具の魅力は、多くの人の心に深く刻まれているのではないでしょうか。

まとめ

「もしもボックス」は、単なるSFガジェットとしてだけでなく、人間の想像力や願望、そして現実世界に対する鋭い視点が凝縮された、非常に奥深いひみつ道具と言えるでしょう。その独特な設定と、数々のエピソードを通して描かれる世界観は、これからも多くの人々を魅了し続けることでしょう。

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