もつカレー

もつカレー

もつカレーは、静岡県静岡市清水区を中心に多くの人々に親しまれている、地域独自の食文化から生まれた料理です。牛や豚のもつを、カレー風味でじっくりと煮込んだこの料理は、そのユニークな味わいと食感で、地元を代表するご当地グルメの一つとして定着しています。

概要

この料理の原型は、かつて存在した「もつ土手煮」にカレーの風味を加えるという発想から生まれたと言われています。今日では、提供される形態も多様化しており、単にもつを煮込んだものとしてだけでなく、串に刺して手軽に食べられる酒の肴として居酒屋などで人気を集めています。また、ご飯の上にたっぷりとかけて、個性的なカレーライスとして提供されることもあり、その楽しみ方は様々です。

沿革と特徴

もつカレーの歴史は、第二次世界大戦後の昭和25年（1950年）に遡るとされています。その発祥の地として伝えられているのが、清水市（現在の静岡市清水区）に暖簾を掲げた老舗「金の字」本店です。この店の初代店主である杉本金重氏が、この独自のメニューを考案した人物と言われています。

杉本氏は、かつて満洲国で暮らしていた際に、そこでカレー料理の技術を身につけた経験を持っていました。シベリアからの帰国後、彼は故郷の愛知県名古屋市で親しまれている郷土料理、特に「土手煮」からヒントを得て、もつをカレー風味で煮込むという斬新なアイデアを形にしたと伝えられています。

「金の字」では、創業以来、このもつカレーの味を守り続けています。特に注目すべきはその調理法です。もつ特有の風味を抑え、カレーの旨味を引き出すためには、丁寧な下ごしらえが欠かせません。例えば、「金の字」では、夕方の開店時間に合わせて、午前中の早い時間から時間をかけてもつを丹念に洗浄する作業が行われるといいます。この入念な下処理によって、もつの臭みが軽減され、カレーの風味がより一層引き立ちます。また、この店では長年にわたりカレーを継ぎ足しながら使用しているとも報じられており（2019年初頭時点の情報）、これにより深いコクと独特の風味が生まれるのかもしれません。

地域での広がりと展開

発祥の店である「金の字」本店から始まったもつカレーは、やがて清水区内の他の飲食店にも広がりを見せました。現在では、JR清水駅周辺の多くの居酒屋や飲食店で、もつカレーが定番メニューの一つとして提供されており、地元の食通や観光客に愛されています。

さらに、この清水もつカレーは、地域を越えてその名を知られるようになりました。静岡市に本社を置く大手食品メーカーであるはごろもフーズは、この地元グルメを家庭でも手軽に楽しめるようにと、缶詰の商品化を行いました。「清水もつカレー」缶として販売されているこの商品は、温めるだけで本格的なもつカレーの味を再現できるため、全国各地で清水の味を楽しむことができるようになりました。

まとめ

もつカレーは、一人の料理人の創意工夫から生まれ、丁寧な調理法でその味を守り続けながら、地域の飲食店に広まり、さらには缶詰として全国に届けられるまでになりました。もつという素材とカレーという風味が見事に融合したこの料理は、清水区の豊かな食文化の一端を示す存在として、これからも多くの人々を魅了し続けることでしょう。

関連項目

カレーライス
B級グルメ
もつ
もつ煮

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