もとまろ

もとまろ

概要

1971年に結成された「もとまろ」は、3人組の女性フォークグループとして短いながらも日本の音楽史に名を刻んでいます。彼女たちの活動期間は非常に短く、リリースされた公式音源はシングルレコード「サルビアの花」ただ一枚のみです。この楽曲は早川義夫が発表したものであり、もとまろはこれをカバーしてヒットさせました。プロ志向ではなかった彼女たちのユニークな軌跡は、当時のアマチュアフォークシーンの一端を伝えるものとして知られています。

結成と『ヤング720』での活躍

グループ誕生のきっかけは、メンバーが青山学院高等部に在学していた頃に遡ります。TBS系のテレビ番組『ヤング720』のスタッフに勧められ、番組内のコーナー『フォークグループ勝ちぬき歌合戦』に出場したことです。当初は自らの手による楽曲で挑戦し、その実力で4週連続で勝ち進むという快挙を達成します。しかし、次の週に披露する楽曲の準備が間に合わず、メンバーの一人であった山田氏の発案により、早川義夫氏が発表した楽曲「サルビアの花」を歌うことになります。この選曲が見事に評価され、彼女たちは5週勝ち抜きを達成しました。

「サルビアの花」の広がりとレコードデビュー

同時期、「サルビアの花」という楽曲自体は、ヤマハが主催する『第3回作曲コンクール』にもエントリーされており、オフコースが歌唱して入賞を果たしていました。

そんな中、『ヤング720』で「もとまろ」が歌った「サルビアの花」のバージョンが、ニッポン放送の深夜の人気番組『コッキーポップ』でオンエアされると、その歌声と楽曲の魅力にリスナーからの反響が殺到します。番組には毎週のように大量のリクエストが寄せられる事態となり、これがきっかけとなり、「もとまろ」はシングル「サルビアの花」でレコードデビューすることになったのです。

レコード化の経緯と活動の終焉

レコード化の過程には、彼女たちのスタンスを示すエピソードが残されています。「サルビアの花」のデモ音源は、ヤマハのスタッフを通じてキャニオン・レコードのプロデューサー、渡辺有三氏のもとへ届けられました。渡辺氏は楽曲を気に入り、商業リリースを決断します。しかし、改めてプロ用のスタジオで録音を試みたものの、思うような仕上がりにならなかったといいます。結局、音質的には必ずしも完璧ではなかったものの、ヤマハで最初に録音されたデモバージョンが、わずかにノイズが入った状態でそのまま公式なシングル盤として世に出されることになりました。

彼女たち自身は、本格的にプロの歌手として活動を続けることに関心を持っておらず、レコードデビュー後も積極的にプロモーション活動を行うことはありませんでした。結果として、「もとまろ」の公式なディスコグラフィは、このシングル「サルビアの花」ただ一枚に留まります。レコードがリリースされると、彼女たちは活動を終え、実質的に解散しました。

このように、「もとまろ」は『ヤング720』での偶然の成功と「サルビアの花」という楽曲への反響をきっかけに突如として現れ、商業的な成功とは一線を画す形で短期間で活動を終えた、日本のフォークシーンにおけるユニークな存在と言えるでしょう。彼女たちが残した唯一の公式音源である「サルビアの花」は、当時の時代背景とともに、今なお多くの人々に語り継がれています。

もう一度検索