やさしい花 (テレビドラマ)

やさしい花

『やさしい花』は、2011年にNHK大阪放送局が製作し、同年9月16日に『かんさい特集』枠で初回放送された日本のテレビドラマです。育児や親子関係の困難をテーマに据え、女優の石野真子と谷村美月が主演を務めました。

この作品は、NHK大阪が展開する「子どもを守れ」キャンペーンの一環として企画・制作されました。放送後には高い評価を受け、第66回文化庁芸術祭の参加作品として選出。同年10月10日にはNHK総合テレビで全国放送され、より多くの視聴者に届けられました。また、本作に関連して、虐待を扱ったドキュメンタリー番組「もしも明日…わが子に虐待を始めたら」が同時期に放送されています。

あらすじ

物語は、大阪のマンションで穏やかな日々を送る木原友子（石野真子）とその夫、卓也（西川忠志）の夫婦を中心に展開します。成人して独立した娘の葉月（早織）もおり、夫婦水入らずの平穏な生活を送っているかに見えました。しかし、友子には人には言えない過去がありました。およそ20年前、夫が家庭を顧みない状況の中、友子は育児による強いストレスから当時まだ3歳だった幼い娘を虐待してしまった経験を持っていたのです。児童相談所のサポートを得て、家族の関係を立て直し、辛い時期を乗り越えてきた過去が、友子の心には深く刻まれています。

ある日、木原家の真下の部屋に、若い母親のユカ（谷村美月）と、幼い息子のミツル（國分健太）が引っ越してきます。夜になると頻繁に聞こえてくる子どもの泣き声や、母親が子どもを乱暴に扱う様子を目の当たりにした友子は、自身の辛い過去と娘との関係を嫌でも思い出さざるを得なくなります。そして、ユカ親子の置かれた状況に心を痛め、何か手助けをしたいという思いを抱き始めます。しかし、他人の家庭の問題にどこまで踏み込んで良いのか、専門家ではない自分が何ができるのかという迷いから、なかなか行動に移せずにいました。

ためらいの日々が続いたある夜、ミツルが泣きながら苦しそうに咳き込む声が聞こえてきます。いてもたってもいられなくなった友子は、ユカの部屋の隣に住む大学生の将志（木咲直人）とともに、ユカの部屋へと入ります。ミツルは熱を出し、嘔吐していました。友子たちがミツルを介抱し、ようやく一息ついたその時、帰宅したユカは友子たちに向かい「あんたらに何が分かるんよ！ほっといて！」と感情的に叫び、助けを強く拒絶します。

ユカの拒絶に打ちのめされ、悩んだ友子は過呼吸を起こして倒れてしまいます。夫の卓也は、友子にこれ以上関わらないよう強く求めますが、連絡を受けて駆けつけた娘の葉月は、「あの子のことを考えてやって」と、母の気持ちに寄り添い、背中を押します。家族の支えと自身の過去、そして目の前の子どもの危機を前に、友子は葛藤の末、ある出来事をきっかけに、勇気を持って若い親子を救うための行動を起こすことを決意するのでした。

キャスト

木原 友子: 石野真子 - 過去に娘を虐待した経験を持つ主婦。下の階の母子を案じる。
里美（小林）優花: 谷村美月 - 友子の真下の部屋に住むシングルマザー。息子に手を上げてしまう。
木原 卓也: 西川忠志 - 友子の夫。妻が他人の問題に関わることに反対する。
木原 葉月: 早織 - 友子の娘。幼少期に母から虐待された過去を持つ。母の行動を後押しする。
工藤 将志: 木咲直人 - 優花の隣室に住む大学生。友子と共に優花親子に関わる。
里美（小林）充: 國分健太 - 優花の息子。4歳。
ママ: 紅萬子 - 優花が働くラウンジの経営者。
アオイ: 赤松悠実 - 優花と同じラウンジで働くホステス。
金森: 松寺千恵美 - 児童相談所の職員。
三宅: 小谷幸弘 - 児童相談所の職員。
優花の父: 青野敏行 - 優花の父親。
幼少期の葉月: 後井梨花

スタッフ

作: 安田真奈
演出: 藤並英樹
制作統括: 越智篤志
製作著作: NHK大阪放送局
児童虐待考証: 津崎哲郎
医事考証: 西谷昌也
美術: 服部竜馬
技術: 中村正則
音響効果: 山田正幸
撮影: 黒川毅
照明: 青井紀子
音声: 佐藤善次郎
映像: 上井紀佳
記録: 木本裕美
* 編集: 狩森ますみ

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