ゆがけ

ゆがけについて

ゆがけ（弓懸、弽、韘）は、日本の伝統的な弓道および弓術において、弓を引くために欠かせない道具です。主に鹿革で作られ、右手にはめて弓の弦から親指を保護するために使用されます。この道具を製作する職人のことを「かけ師」と呼びます。歴史的に見ても、ゆがけは日本の射法に合わせて独自に発展したものであり、その形状や作りは時代とともに変化してきました。

概要

和弓の発展と共に登場したゆがけは、弦を親指で支えて弓を引く「蒙古式」の取り掛けに基づいています。歴史を通じて様々な流派や射術が誕生し、それに伴ってゆがけも進化してきました。現在広く使用されているのは「三ツガケ」や「四ツガケ」と呼ばれるもので、親指と手首をしっかりと保護する設計が特徴です。

ゆがけを装着することを「ゆがけを挿す」と言い、装着や取り外しの際には正座で行うべきとされています。特に、弓射以外の作業を行う際は、ゆがけを外すことが基本的作法とされています。これには「下ガケ」と呼ばれる薄い布を下に着用し、手汗を吸い取ることでゆがけを保護する役割があります。

構造と材料

ゆがけの親指部には、木材か水牛の角が指筒状にくり抜かれた装置が入っており、手首部分には固めの牛革が使用されています。この構造により、弦の圧力から親指を守りつつ、手首の負担を軽減しています。特に原則として鹿革が選ばれるのは、その柔軟性や耐久性、肌触りの良さが理由です。ゆがけの縫製は非常に丁寧に行われ、職人の技術が光る部分でもあります。鹿革は「燻革」と呼ばれ、いぶし加工を施されることが多く、これが防菌や防虫効果を高めるために重要です。

部位の名称

• - 帽子: 親指先から根元にあたる部分。弦の圧力を受けるため、重要な部位です。
• - 角: 親指を保護するために帽子部分に入れられる木材や水牛の角。
• - 控え: 手首部分を覆う部分で、こちらにも固めの牛革が入れられることが多いです。
• - 弦枕: 弦が掛かる部分。弦の滑りを良くするための工夫がなされています。

各部位の設計は、その用途に応じて柔軟性や堅さが異なります。特に、弦枕の形状や位置によって弓を引いた際の矢の飛び方にも影響が出るため、非常に繊細な調整が求められます。

使用の重要性

弓道において、ゆがけの作りに影響を受けるのは射手のパフォーマンスです。確かな作りのゆがけを使用していることは、行射の質を高める上で極めて重要です。また、適切に手入れを行えば、一生涯持つとされているため、弓道家にとっては大切に扱うべき道具です。さらに、弓道家の間では「かけがえのない」という言葉の由来とも考えられています。

結論

ゆがけは、日本の弓道において単なる保護具ではなく、射手の技術や方針を表現する重要な要素と言えます。その製作には職人の高い技術が求められ、時代々々の変化を反映しながら、現代の弓道でも必須の器具として幅広く利用されています。

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