ゆず一家

ゆず一家：ゆずの原点と飛躍の軌跡を刻んだデビューアルバム

1998年7月23日、ゆずの記念すべき最初のオリジナルアルバム『ゆず一家』がリリースされました。このアルバムは、彼らの音楽的ルーツと、後の大成功への布石となった重要な作品です。

全14曲を収録した『ゆず一家』は、先行シングルとして既に話題を集めていた「夏色」を筆頭に、後のシングルカットとなる「少年」など、ゆずの初期の魅力が詰まった内容となっています。「少年」の間奏には、お笑いトリオ・ネプチューンが参加しているという、今では伝説的なエピソードも存在します。ただし、このバージョンはアルバム収録版のみで、後にシングルカットされた際には、とんねるずの『ねるとん紅鯨団』での名ゼリフが北川悠仁によって叫ばれるアレンジに変更されました。

このアルバムのリリースとヒットは、ゆずの活動に大きな変化をもたらしました。それまで拠点としていた横浜・伊勢佐木町の松坂屋前での路上ライブは、集まる観客の多さから、同年8月30日に惜しまれつつも終了することとなります。しかし、現在でもその場所はゆずの原点であり、時折路上ライブを行うことがあると語られています。2003年の第54回NHK紅白歌合戦では、ゆずはこの松坂屋前からの生中継を行い、「夏色」を披露しました。これは、当時地上波でのテレビ出演が少なかったゆずにとって、大きな転換点となりました。

アルバム収録曲は、それぞれの楽曲に個性的なエピソードが隠されています。例えば、「四時五分」は、完成時間が朝の4時5分だったことからそのまま曲名になったという逸話があります。「少年」はエースコックや伊藤園のCMソングにも起用され、様々な扮装をしたゆずの姿はミュージックビデオでも楽しめます。「手紙」はライブで観客に手紙を読み上げる恒例となっている曲であり、「心の音」は後にベストアルバムにも収録されるなど、多くの楽曲が現在も高い人気を誇っています。また「雨と涙」は、弾き語りのライブ音源がミュージックビデオとして収録されているなど、初期ゆずの生々しいライブ感が味わえます。「巨女」は、VHS版の特典映像として収録されたシークレットトラックで、北川悠仁の様々な扮装が見どころです。「月曜日の週末」は、アルバイト先の定休日に由来するタイトルであり、初期ライブの定番曲として親しまれていました。「ソウロウ」は、長渕剛とのセッションでも披露された、路上ライブ時代には観客が逃げ出すほどだったという、ゆずの音楽的挑戦を示す曲です。「贈る詩」はアンコールの掛け声の代わりに会場全体で歌われることがあるなど、ファン参加型の側面も持ち合わせています。そして最後の曲「境界線」は、岩沢厚治が単独で作詞作曲を手掛けた楽曲で、アルバムにおいて岩沢が単独で作詞作曲した曲が最後に収録されたのは、現時点ではこの作品のみとなります。

演奏陣には、寺岡呼人、鈴木茂、駒沢裕城など豪華なミュージシャンが参加しており、ゆずの音楽的才能を更に引き立てる役割を果たしています。

『ゆず一家』は、単なるデビューアルバムという枠を超え、ゆずの音楽的ルーツ、初期の熱意、そして後の成功への道を示す、彼らの歴史において非常に重要な作品と言えるでしょう。

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